コロナ禍の影響はまだ残る。深刻な打撃を受ける中小企業に、実効性のある対策を!

法人会の「令和4年度税制改正に関する提言」が、9月21日の公益財団法人全国法人会総連合(以下「全法連」)の理事会でまとまった。
同提言は、会員企業からの要望意見、税制改正に関するアンケートなどをもとに税制委員会の審議を経て、取りまとめられたもので、「税・財制改革のあり方」「経済活性化と中小企業対策」「地方のあり方」「震災復興等」「その他」などからなっている。
全法連では、全国75万会員の声として、財務省、総務省、中小企業庁、自民党、公明党および国会議員などに対して実現を求めて要望活動を行っている。
さらに、全国41都道県連および440単位会でも、地元選出の国会議員、地方自治体の首長、議長あて広汎な要望活動を行っている。提言(要約)は次のとおり。

T 税・財政改革のあり方

1.財政健全化に向けて
○2025年度は団塊の世代がすべて75歳の後期高齢者となる節目の年であり、社会保障給付の急増が見込まれる「2025年問題」と称されている。
政府が歳出・歳入の一体改革に本気で取り組めば、2025年度のPB黒字化は決して達成できない目標ではないことを強調しておきたい。
○感染症拡大が収束段階になった際には、税制だけではなく大胆な規制緩和を行うなど、スピード感をもって日本経済の本格的な回復に向けた施策を講じる必要がある。なお、相応の需要喚起を行うことも必要ではあるが、それがバラマキ政策とならないよう十分配慮すべきである。
○財政健全化は国家的課題であり、コロナ収束後には本格的な歳出・歳入の一体的改革に入れるよう準備を進めることが重要である。歳入では安易に税の自然増収を前提とすることなく、また歳出については、聖域を設けずに分野別の具体的な削減の方策と工程表を明示し、着実に改革を実行するよう求める。

2.社会保障制度に対する基本的考え方
○社会保障給付費は公費と保険料で構成されており、財政のあり方と密接不可分の関係にある。適正な「負担」を確保するとともに、「給付」を「重点化・効率化」によって可能な限り抑制しないかぎり、持続可能な社会保障制度の構築と財政健全化は達成できない。
○社会保障は「自助」「公助」「共助」が基本である。
これを踏まえ公平性を確保したうえで、その役割と範囲を改めて見直す必要がある。次なる新型感染症が発生した場合に備える意味でも、抜本的な医療制度改革の議論を開始する必要がある。
○医療は産業政策的に成長分野と位置付け、デジタル化対応など大胆な規制改革を行う必要がある。
令和4年度は診療報酬の改定年となるが、給付の急増を抑制するために診療報酬(本体)の配分等を見直すとともに、ジェネリックの普及率をさらに高める。

3.行政改革の徹底
○地方を含めた政府・議会は「まず隗より始めよ」の精神に基づき自ら身を削り、以下の諸施策について、直ちに明確な期限と数値目標を定めて改革を断行するよう強く求める。
・国・地方における議員定数の大胆な削減、歳費の抑制。厳しい財政状況を踏まえ、国と地方の公務員削減と能力を重視した賃金体系による人件費の抑制。

U 経済活性化と中小企業対策

1.新型コロナウイルスへの対応
○中小企業は我が国企業の大半を占め、地域経済の活性化と雇用の確保などに大きく貢献している。
いわば経済社会の土台ともいえる存在であり、これが立ち行かなくなれば、経済全体にとっても取り返しのつかない事態に陥る。政府と自治体は複雑で多岐にわたるコロナ対策の周知・広報を徹底するとともに、申請手続きの簡便化やスピーディーな給付を行い、中小企業が存続を図れるよう全力で取り組む必要がある。

2.法人税関係
○中小法人に適用される軽減税率の特例15%を本則化すべきである。また、昭和56年以来、800万円以下に据え置かれている軽減税率の適用所得金額を、少なくとも1,600万円程度に引き上げる。
○租税特別措置については、公平性・簡素化の観点から、政策目的を達したものは廃止を含めて整理合理化を行う必要はあるが、中小企業の技術革新など経済活性化に資する措置は、以下のとおり制度を拡充したうえで本則化すべきである。
@中小企業投資促進税制については、対象設備を拡充したうえ、「中古設備」を含める。
A少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置については、損金算入額の上限(合計300万円)を撤廃し全額を損金算入とする。なお、それが直ちに困難な場合は、令和4年3月末日までとなっている特例措置の適用期限を延長する。

3.消費税関係
○消費税は社会保障の安定財源確保と財政健全化に欠かせないが、軽減税率制度は事業者の事務負担が大きいうえ、税制の簡素化、税務執行コストおよび税収確保などの観点から問題が多い。このため、かねてから税率10%程度までは単一税率が望ましく、低所得者対策は「簡素な給付措置」の見直しで対応するのが適当であることを指摘してきた。国民や事業者への影響、低所得者対策の効果等を検証し、問題があれば同制度の是非を含めて見直しが必要である。
○消費税の滞納防止は税率の引き上げに伴ってより重要な課題となっている。消費税の制度、執行面においてさらなる対策を講じる必要がある。
○令和5年10月からの「適格請求書等保存方式」導入に向け、本年10月より「適格請求書発行事業者」の登録申請がはじまる。新型コロナは小規模事業者等の事業継続に大きな困難をもたらしており、さらなる事務負担を求めれば休廃業を加速することになりかねない。現行の「区分記載請求書等保存方式」を当面維持するなど、弾力的な対応を求める。

4.事業承継税制関係
○我が国企業の大半を占める中小企業は、地域経済の活性化や雇用の確保などに大きく貢献している。中小企業が相続税の負担等によって事業が承継できなくなれば、経済社会の根幹が揺らぐことになる。平成30年度の税制改正では比較的大きな見直しが行われたが、さらなる抜本的な対応が必要である。
○我が国の納税猶予制度は、欧州主要国と比較すると限定的な措置にとどまっており、欧州並みの本格的な事業承継税制が必要である。とくに、事業に資する相続については、事業従事を条件として他の一般資産と切り離し、非上場株式を含めて事業用資産への課税を軽減あるいは免除する制度の創設を求める。
○取引相場のない株式の評価については、企業規模や業種によって多様であるが、企業価値を高めるほど株価が上昇し、税負担が増大する可能性があるなど、円滑な事業承継を阻害していることが指摘されている。取引相場のない株式は換金性に乏しいこと等を考慮し、評価のあり方を見直すべきである。

V 地方のあり方
○今般のコロナ禍は国と地方の役割分担の曖昧さや行政組織間の意思疎通不足、病院間の特性に応じた役割分担がなされていなかったことが浮き彫りとなった。これを機に、緊急時の医療体制を整備する必要があるが、そのためには国と地方、さらに自治体間の情報共有が不可欠であり、改めて広域行政の必要性を強調しておきたい。
○地方自身がそれぞれの特色や強みをいかした活性化戦略を構築し、地域民間の知恵と工夫により、新たな地場技術やビジネス手法を開発していくことが不可欠である。その際に最も重要なのは、地方が自立・自助の精神を理念とし、自らの責任で必要な安定財源の確保や行政改革を企画・立案し実行していくことである。

W 震災復興等
○政府は東日本大震災からの復興について、令和3年度から7年度までの5年間を「第2期復興・創生期間」と位置付け、令和3年度以降の復興の円滑かつ着実な遂行を期することとしている。そのためにはこれまでの効果を十分に検証し、予算の執行を効率化するとともに、原発事故への対応を含めて引き続き適切な支援を行う必要がある。とりわけ被災地における企業の定着、雇用確保を図ることが重要であり、実効性のある措置を講じるよう求める。

X その他
○環境問題に対する税制上の対応として、欧米などの制度や議論の動向を見極めつつ、既存のエネルギー関係税制との調整を図り、幅広い観点から十分な検討が行われる必要がある。
○税の意義や税が果たす役割を国民が十分に理解しているとは言いがたい。学校教育はもとより、社会全体で租税教育に取り組み、納税意識の向上を図っていく必要がある。

提言の全文は「全法連ホームページ」でご覧いただけます。
https://www.zenkokuhojinkai.or.jp/


今回は、年末調整における留意事項等を掲載いたしますので、事務の参者にお役立てください。

1 税務関係書類における押印義務の改正
税務署長等に提出する源泉所得税関係書類について、押印が不要とされました。
このため、保険料控除申告書などの年末調整の際に使用する書類についても、従業員等に押印をしていただく必要はありません。

2 所得金額調整控除について
「所得金額調整控除」とは、その年の年末調整の対象となる給与の収入金額が850万円を超える所得者が、特別障害者に該当する場合又は年齢23歳未満の扶親族、特別障害者である同一生計配偶者若しくは特別障害者である扶養親族を有する場合に、その所得者本人の給与所得の金額から15万円を限度として、給与の収入金額(その給与の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得の金額から控除するというものです。
この「所得金額調整控除」は、 同一世帯である夫婦で、夫婦の両方が給与の収入金額850万円を超える人に該当し、年齢23歳未満の扶養親族がいるような場合は、夫婦の両方が控除の適用を受けることができます。
例えば、夫婦の両方の給与の収入金額が850万円を超えており、20歳の子がいる場合、扶養控除は夫婦のどちらか一方しか受けることができませんが、「所得金額調整控除」は夫婦の両方とも控除を受けることができますので、該当する人は「所得金額調整控除申告書」の提出もれがないようご注意ください。

3 住宅借入金等特別控除(連帯債務となっている借入金等がある場合)について
「住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書」に連帯債務者の記載がある場合には、次の算式により、控除を受ける人が負担すべき部分の年末残高を計算します。


「控除を受ける人が負担すべき割合」については、原則として、住宅借入金等特別控除の適用を受ける最初の年の確定申告の際に提出した「住宅借入金等特別控除額の計算明細書」等に記入した負担割合によります。
「住宅借入金等特別控除申告書」の「備考」欄に、他の連帯債務者から「私は連帯債務者として、住宅借入金等の残高000円のうち、 000円を負担することとしています。」等の文言、 住所及び氏名の記入を受けてください。
また、その方が給与所得者である場合には、 その勤務先の所在地及び名称も併せて記入してください。
なお、居住日の属する年分が平成31年から令和3年までの各年分である個人に対し、令和2年10月1日以後に税務署から送付する控除証明書には、控除を受けるべき人が負担すべき割合が記載されています(この負担すべき割合が記載された控除証明書の添付をする場合には、「住宅借入金等特別控除申告書」の「備考」襴への連帯債務者に関する事項の記載は不要です。)。

4 「年末調整がよくわかるページ」について
国税庁ホームページでは、年末調整に関する情報を掲載した「年末調整がよく分かるページ」を開設しています。このペー ジでは、年末調整のしかたについての動画をはじめ、年末調整に関する各種様式・パンフレットなどを掲載しています。

本年からは「源泉徴収義務者の方向け」、「従業員の方向け」それぞれに、年末調整の手順などについて分かりやすく説明した情報を掲載していますので、是非ご利用ください。


「年末調整がよくわかるペー ジ」へのQRコードはこちら

 

 
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