令和2年度税制改正では、持続的な経済成長の実現に向け、オープンイノベーションの促進及び投資や賃上げを促すための税制上の措置が講じられました。さらに、経済社会の構造変化を踏まえ、全てのひとり親家庭の子どもに対する公平な税制を実現するとともに、NISA制度の見直し等が行われました。
 法人会では、昨年9月に「令和2年度税制改正に関する提言」を取りまとめ、その後、政府・政党・地方自治体等に提言活動を積極的に行ってまいりました。今回の改正では、中小法人向け税制措置の適用期限延長など法人会の提言事項の一部が盛り込まれ、以下のとおり実現する運びとなりました。

[法人課税]
1.少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置
法人会提言 改正の概要
  • 少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例措置については、損金算入額の上限(合計300万円)を撤廃し全額を損金算入とする。なお、それが直ちに困難な場合は、令和2年3月末日までとなっている特例措置の適用期限を延長する。
  • 適用対象から、連結納税制度適用事業者及び従業員500人超の法人が除外されたうえで、適用期限が2年延長されます。

 

2.交際費課税の適用期限延長
法人会提言 改正の概要
  • 交際費課税の特例措置については、適用期限が令和2年3月末日までとなっていることから、その延長を求める。
  • 中小法人の交際費課税の特例措置(定額控除限度額800万円まで損金算入可)の適用期限が2年延長されます。
  • 交際費等のうち接待飲食費の50%までを損金算入できる特例措置については、対象法人から資本金の額等が100億円を超える法人が除外されたうえで、適用期限が2年延長されます(中小法人の交際費課税の特例措置との選択適用)。

 

[消費課税]
1.消費税の確定申告書の提出期限
法人会提言 改正の概要
  • 消費税の確定申告書の提出期限は、前述の法人税の確定申告書の提出期限に合わせ、課税期間終了後3か月以内(現行2か月以内)とすること。
     なお、上記改正が行われるまでの間においても、法人税の申告期限の延長特例を受けている法人については、消費税についても申告期限の延長を認めること。
  • 法人税の確定申告書の提出期限の延長の特例を受ける法人について、消費税の申告期限を1月延長する特例が創設されます。

 

[その他]
1.地方のあり方
法人会提言 改正の概要
  • 地方創生では、さらなる税制上の施策による本社機能移転の促進、地元の特性に根差した技術の活用、地元大学との連携などによる技術集積づくりや人材育成等、実効性のある改革を大胆に行う必要がある。
  • 地方拠点強化税制の適用期限が2年延長されます。また、雇用促進に係る税制措置について、移転型事業の上乗せ措置における雇用者1人当たりの税額控除額が拡充されます。

 

2.電子申告
法人会提言 改正の概要
  • 国税電子申告(e−Tax)の利用件数は年々拡大してきているが、さらなる促進を図る観点から、制度の一層の利便性向上と、地方税の電子申告(eLTAX)とのシステム連携を図る必要がある。
  • 振替納税の通知依頼及びダイレクト納付の利用届出について、e−Taxにより申請等を行うことが可能となります。
 

 今回は、年末閲整手続の電子化に向けた取組について掲載いたしますので、事務の参者にお役立てください。
 なお、これらの取組により、必すしも年末調整関係書類を電子データにより提供しなければならないわけではありません。

1 年末調整手続の電子化の概要

 扶養控除等申告書、保険料控除申告書等は、平成19年7月1日以降提出するものについては、電子データで提供できるよう手当てされています。
 しかし、これまでは、扶養控除等申告書などを電子データで提供する場合でも、住宅ロ ーン控除申告書や控除証明書等は書面で提出又は提示する必要がありました。
 平成30年度の税制改正では、令和2年分の年末調整から「住宅ローン控除申告書」等も電子データで提供できるよう手当てされたほか、これらの年末調整申告書を電子データで勤務先へ提供する場合には、生命保険料控除、地震保険料控除及び住宅借入金等特別控除に係る控除証明書等についても電子データで提供できるよう手当てされました。 これに伴い、年末調整手続の電子化に向けた施策が実施されます。

 年末調整手続が電子化された場合は、 次のような手順となります。
@従業員が、保険会社等から控除証明書等を電子データで受領
A従業員が、国税庁ホームページ等からダウンロードした年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(※)に、住所・氏名等の基礎項目を入力し、@で受領した電子データをインポート(自動入力、控除額の自動計算)して年末調整申告書の電子データを作成
B従業員が、Aの年末調整申告書データ及び@の控除証明書等データを勤務先に提供
C勤務先が、Bで提供された電子データを給与システム等にインポートして年税額を計算

※年末調整控除申告書作成用ソフトウェア(年調ソフト)とは、年末調整申告書にいて、 従業員が控除証明書等データを活用して簡便に作成し、勤務先に提出する電子データまたは書面を作成する機能を持つ、国税庁が無償で提供するソフトウェアです(令和2年10月国税庁ホームページ等にて公開予定)。

2 年末調整手続の電子化のメリット
 従業員は、これまでの手書きによる手続(年末調整申告書の記入、控除額の計算など)を省略でき、年末調整申告書の作成を簡素化できます。
 勤務先は、従業員が年謂ソフトで作成した年末調整申告書データを利用することにより、控除額の検算が不要となります。
 また、控除証明書等データを利用した場合、添付書類等の確認に要する事務が削減されます。
 さらに、書面による年末調整の場合の書類保管コストも削減することができます。

3 年末調整手続の電子化へ向けた準備
(1)電子化の実施方法の検討
 年末調整の電子化を実施するに当たり、従業員が使用する年末調整申告書作成用のソフトウェアについてどのソフトウェアを使用するか、電子化後の年末調整手続の事務手順をどうするかなどを検討します。
(2)従業員への周知
 従業員から年末調整申告書を電子データにより提供を受けるに当たり、法令上は事前に従業員から同意を得る必要はありません。
 しかし、電子化に当たっては、従業員においても、保険会社等から控除証明書等データを取得するための手続など、事前準備が必要となることから、予め従業員への周知が必要となります。
(3) 給与システム等の改修等
 従業員から提供を受ける年末調整申告書データや控除証明書等データを、ご利用の給与システム等にインポートし、年税額等の計算を行うためのシステムの改修等を行います。
 詳しくはご利用の給与システム等の開発業者等にお問い合わせください。
(4)税務署への届出
 従業員から年末調整申告書に記載すべき事項を電子データにより提供を受けるためには、勤務先があらかじめ所轄税務署長に、「源泉徴収に関する申告書に記載すべき事項の電磁的方法による提供の承認申請書」を提出し、その承認を受ける必要があります。
 なお、この申請書を提出した月の翌月末日までに税務署長から承認通知又は 承認しないことの決定通知がなければ、この申請書を提出した月の翌月末日に 承認があったこととされますので、ご留意ください。

 

 

 

 

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