中小企業に対する軽減税率・投資促進税制が2年間延長!
 政府は、平成30年12月21日に平成31年度税制改正大綱を閣議決定しました。
 法人会が提言していた、中小企業に対する軽減税率・投資促進税制などは2年間延長され、消費税率の引上げに対しては、消費税率引上げ後の需要減に配慮した内容も含まれています。主な内容をお知らせします。
法人税関係

■研究開発費税制の見直し
 試験研究費の総額に係る税額控除について、次のように税額控除率を見直し、一定のベンチャー企業の控除税額の上限は当期の法人税の25%から40%に引き上げられます。
<増減試験研究費割合8%超>
9.9%+(増減試験研究費割合-8%)×0.3
<増減試験研究費割合8%以下>
9.9%-(8%-増減試験研究費割合)×0.175
 その他控除税額の上限の上乗せ、中小企業技術基盤強化税制、特別試験研究費の額に係る税額控除制度などについても、一部見直しが行われます。

■中堅・中小企業向け特例
・中小企業者等の法人税の軽減税率の特例は、2年間延長されます。
・中小企業投資促進税制について、2年間延長されます。
・中小企業者等が特定経営力向上設備等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度は、対象となる設備の見直しを行った上で、2年間延長されます。
・特定中小企業者等が経営改善設備を取得した場合の特別償却又は税額控除制度は、認定支援機関の確認を受けることを適用要件に加えて、2年間延長します。
・地域経済けん引事業の促進区域内で特定事業用機械等を取得した場合の特別償却又は税額控除制度は、2年間延長します。
・青色申告書を提出する中小企業者で、事業継続力強化計画又は連携事業継続力強化計画に係る特定事業継続力強化設備等を取得し事業に供した場合に、20%の特別償却が認められます。
・法人税関係の中小企業向けの措置法におけるみなし大企業の範囲について、見直しが行われます。

■事業税率の見直し
 平成31年10月以降、事業税の税率を引き下げ、特別法人事業税を創設します。資本金1億円以下の普通法人年800万円超の所得に対し、事業税7%・特別法人事業税は2.59%(改正前は事業税9%) に変更されますが、全体の税負担としては大きな影響はありません。

所得税・住民税関係

■住宅ローン減税の特例の創設
 現在10年間利用できる住宅ローン減税が、平成31年10月〜平成32年12月までに消費税率10%で住宅を取得した場合、11〜13年目の3年間で住宅価格の2%相当の税額控除を受けられる特例が創設されます。平成31年10月以降、消費税率引上げ分を、税額控除が受けられる仕組みとなっています。

■老人ホームに入っている場合でも空き家の3000万円控除が利用可能
 空き家に係る3000万円控除について、被相続人が要介護認定を受けて老人ホーム等へ入所していた場合などに利用できることとなります。

■転勤などで一時出国の場合にNISA口座の継続
 NISA口座を開設している居住者が、転勤などで一時的に居住者に該当しないことになる場合でも、所定の手続きをすることで最大5年間NISA口座について居住者に該当するとして利用することが可能にとなります。

■ふるさと納税の寄付先の指定化
 ふるさと納税について、募集が適正であること、返礼割合が3割以下で返礼品を地場産品にしているなどのルールを守っている自治体を総務大臣が指定して、指定を受けた自治体への寄付金のみが、ふるさと納税の対象とされます。 平成31年6月以降の寄付から適用されます。

■シングルマザー等に対する個人住民税の非課税制度
 児童扶養手当の支給を受けている児童の父又は母で、現に婚姻をしていない者または配偶者の生死が不明の場合に、前年の合計所得金額が135万円以下であれば、住民税が非課税とされます。平成33年度以後の住民税から適用されます。

相続税・贈与税関係

■個人事業者に対する事業承継税制の創設
 経営承継円滑化法による認定を受けた相続人が平成31年から平成40年までの間に、相続等により特定事業用資産を取得し事業を継続する場合は、特定事業用資産に対応する相続税について10割の納税猶予を受けることができます。  経営承継円滑化法による認定を受けた受贈者が、平成31年から平成40年までに、贈与により特定事業用資産を取得し、事業を継続していく場合には、贈与により取得した特定事業用資産に対応する贈与税について納税猶予を受けることができます。

■事業用小規模宅地を利用した租税回避の防止
 小規模宅地の特例について、特定事業用宅地等の範囲から、相続開始前3年以内に事業の用に供された宅地等が除外されます。平成31年4月以後の相続から適用されます。ただし、同日前から事業の用に供されている宅地等については適用されません。これは、特定事業用宅地が8割引きの評価を受けることを利用した租税回避を防止するためです。そのため、当該宅地の上で事業に要されている減価償却資産の価額が宅地の価額の15%以上である場合は、規制の対象とされません。

■教育資金贈与に関する改正
 教育資金について、次の改正をして2年間延長することとしました。
@平成31年4月以降の贈与については、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1000万円を超える場合には、適用されません。
A受贈者が23歳に達した以降は、教育資金の範囲から、教育に関する役務提供の対価、スポーツ・文化芸術に関する活動等に係る指導の対価、これらの役務提供又は指導に係る物品の購入費及び施設利用料が除外されます。
B贈与者が、死亡の前3年以内に教育資金贈与をした場合で、受贈者が23歳未満である場合など一定の場合に該当しない場合は、相続又は遺贈により取得したものとみなし、相続税の計算に組み込まれます。また、従来30歳で打ち切りでしたが、受贈者が学校等に在学している場合などは40歳まで教育資金管理契約が延長されます。

■結婚・子育て資金贈与に関する改正
 平成31年4月以降の贈与については、受贈者の贈与前年の合計所得金額が1000万円を超える場合には、適用がなくなります。
本制度は2年間延長されることになりました。

■事業承継税制の改正
 やむを得ない事情により資産保有型会社・資産運用型会社に該当した場合に、その該当した日から6月以内に消費できれば納税猶予を継続できます。

消費税関係

■輸出物品販売場についての見直し
 輸出物品販売場の許可を受けている事業 者が、7月内の期間を定めた臨時販売場を設 置しようとする場合、前日までに届け出をする ことで、臨時販売場が輸出物品販売場とみな されます。平成31年7月1日以後に行われる 課税資産の譲渡等から適用され、手続委託 型輸出物品販売場許可申請書に、委託先の 承認通知書の写しが不要となります。

■金地金等の密輸に対する改正
 密輸品と知りながら行った課税入れについて、仕入れ税額控除制度の適用が認められなくなります。平成31年4月1日以後の課税仕入れから適用されます。
 金又は白金の地金の課税仕入れについて、本人確認書類の写しの保存を、仕入税額控除の要件とします。平成31年10月1日以降の課税仕入れから適用されます。

その他

■消費税率引上げに合わせた自動車に関する税率の整備
・平成31年10月から平成32年9月まで取得した自家用乗用車の環境性能割は、税率が1%軽減されます。
・自家用自動車に係る種別割は、平成31年10月以後に新車新規登録を受けたものについて、引き下げられます。

■民法における成年年齢引き下げへの影響
 民法改正において、税法上の未成年を20歳未満から18歳未満に引き下げます。民法に合わせて平成34年4月1日以後の判定で利用されます。相続税の未成年控除、未成年のNISA口座、住民税の非課税などの取扱いに影響します。

平成30年12月21日に閣議決定された平成31年度税制改正の大綱における個人所得課税の概要について抜粋いたしましたので、今後の事務の参考としてください。
(財務省ホームージ「平成31年度税制改正の大綱」より)

1 住宅ロ ーン控除の拡充
     消費税率の引上げに際し、需要変動の平準化の観点から、住宅に関する税制上の支援策を講じます。
※平成31年(2019年)10月1日から平成32年(2020年)12月31日までの間に居住の用に供した揚合に適用します。
(1) 消費税率10%が適用される住宅取得等について、住宅ローン控除の控除期間を3年延長(現行10年間⇒13年間)します。
(2) 11年目以降の3年間については、消費税率2%引上げ分の負担に着目した控除額の上限を設定します。
 具体的には、各年において、以下のいすれか少ない金額を税額控除します。
 @ 建物購入価格の2/3%
 A 住宅ローン年末残高の1%
 ⇒3年間で消費税増税分にあたる「建物購入価格の2% (2/3%X3年)」の範囲で減税を行います。
  ただし、ローン残高が少ない場合は、現行制度通り住宅ローン年末残高に応じて減税します。
  (注1)建物購入価格、住宅ローン年末残高の控除対象限度額は一般住宅の場合4,000万円、認定住宅の場合5,000万円(現行制度と同水準)
  (注2)入居11〜13年目についても、所得税額から控除しきれない額は、現行制度と同じ控除限度額(所得税の課税総所得金額等の7%(最高13.65万円))の範囲で個人住民税額から控除。
  (注3)入居1〜10年目は現行制度どおり税額控除。
2 森林環境税(1反称)及び森林環境譲与税Ci反称)の創設
  森林整備等に必要な地方財源を安定的に確保する観点から、森林環境税(仮称)(平成36年度(2024年度)から年額1,000円)及び森林環境譲与税(仮称)(平成31年度(2019年度)から 譲与)を創設します。
3 ふるさと納税制度の見直し
  過度な返礼品を送付し、制度の趣旨を歪めているような団体については、ふるさと納税 (特例控除)の対象外にすることができるよう、 制度の見直しを行います。
4 子どもの貧困に対応するための個人住民税の非課税措置
  子どもの貧困に対応するため、事実婚状態でないことを確認した上で支給される児童扶養手当の支給を受けており、前年の合計所得金額が135万円以下であるひとり親に対し、個人住民税を非課税とする措置を講じます。(平成33年度(2021年度)分の個人住民税から適用)。
 

 

 

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