中小企業向け租税特別措置の延長と事業承継税制が拡充される!
法人会の改正要望実現へ
 政府は、平成29年12月22日に平成30年度税制改正大綱を閣議決定しました。
 デフレ脱却と経済再生に向け、賃上げ・生産性向上のための税制上の措置及び地域の中小企業の設備投資を促進するための税制上の措置、さらに、中小企業の代替わりを促進する事業承継税制の拡充等が盛り込まれました。
法人税関係

■所得拡大促進税制の改正
 改正後の所得拡大促進税制は、青色申告書を提出する法人の平成30年4月1日から平成33年3月31日までに開始する各事業年度に適用されます。中小企業者について、前年度比1.5%以上賃上げした企業は、前年度からの給与増加額の15%の税額控除を受けることができます。増加割合が2.5%以上である場合など一定の要件を満たす場合は、給与等の増加額の25%まで控除税額が増加します。

■交際費等の取扱い
 交際費等の損金不算入制度については、適用期限が2年延長されます。1人当たり5,000円以下の接待飲食費にかかる損金算入の特例、中小法人に係る800万円までの損金算入の特例についても2年延長されます。

■少額減価償却資産の特例
 中小企業等に認められている少額減価償却資産の特例について2年延長されます。従来通り取得価額30万円未満の減価償却資産について、年間で300万円までは損金算入が可能です。

相続税関係

■事業承継税制の特例
 現行の事業承継税制は、事業承継に係る株式の評価額の80%に対する相続税が納税猶予され、次の承継人へバトンタッチすれば免除される仕組みです。今回の改正では、株式の評価額の全部に対する相続税あるいは贈与税が納税猶予されるほか、猶予対象の株式の制限(総株式数の2/3)が撤廃されることになりました。優良な会社の株式の評価については20%でも税負担が決して軽くないので、全額について納税猶予できることは画期的です。平成25年度税制改正で、雇用継続要件が瞬間の数字ではなく平均で評価されるなど、従来のリスクの大部分が解消されていたので、当面の税負担が生じなくなることで、ますます使いやすくなります。なお、改正後の事業承継税制を利用する場合は、平成30年4月1日から平成35年3月31日までに、特例承継計画を都道府県に提出して、認定を受ける必要があります。

■一般社団法人等に対する相続税
 一般社団法人や一般財団法人は、出資者がいないのが特徴で、その持分を保有する者がいないため、一般社団法人等が保有する財産には、相続税がかからないという問題点がありました。平成30年度税制改正では、特定の一般社団法人等の役員が死亡した場合に、その一般社団法人等の純資産を同族役員の数で除して計算した金額を、遺贈により取得したものとして、その特定一般社団法人等に相続税を課税することになりました。平成30年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税について適用されます。ただし、平成30年3月までに設立された一般社団法人等については、平成33年4月1日以後の一般社団法人等の役員の死亡に係る相続税に適用されます。

■一般社団法人等に対する贈与等
 個人から一般社団法人等に対して財産の贈与等があった場合に、贈与税等の負担が不当に減少する結果と認められる場合に、贈与税が課税されることについて明確化されます。平成30年4月1日以後の贈与又は遺贈に係る贈与税又は相続税に適用されます。

■小規模宅地等の適用の厳格化
 持ち家に居住していない者に対する特定居住用宅地等の特例について、@3年以内に、3親等以内の親族や特別の関係のある法人が所有する家屋に居住したことがある者、A相続開始時において居住していた家屋を過去に所有していた場合は、適用できなくなります。 貸付事業用宅地等の範囲から、3年以内に貸付け事業の用に供されていた宅地等が除外されます。平成30年4月1日以後の相続又は遺贈から適用されます。

所得税関係

■給与所得控除の縮小
 給与所得控除については、一律10万円引き下げ、給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入額を850万円とし、その上限額が195万円に引き下げられます。

■公的年金等控除の縮小
 公的年金等控除については、一律10万円引き下げ、公的年金等の収入金額が1,000万円を超える場合の控除額については、上限額が195万5千円となります。さらに、それ以外の合計所得金額が1,000万円を超え2,000万円以下の場合は、上記控除額を10万円引き下げ、それ以外の合計所得額が2,000万円を超える場合は、上記控除額が20万円引き下げられます。

■基礎控除の改正
 基礎控除については、一律10万円引き上げられます。ただし、合計所得金額が2,400万円を超える個人については、控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人は、基礎控除が適用されないことになります。

■青色申告特別控除の改正
 正規の簿記の原則に従って記録している者に対する青色申告特別控除が現行の65万円から55万円に引き下げられます。ただし、電子申告を行っている場合等には、青色申告特別控除は65万円となります。これらの所得税の改正は、平成32年分の所得税及び平成33年度分以後の個人住民税について適用されます。


消費税関係

■輸出物品販売制度の見直し
 免税販売手続きについて、電子化されます。従来の購入記録票の貼付、割り印などの事務手続きが不要になり、大幅に緩和されます。平成32年4月1日以後の販売分からの適用になります。

■簡易課税の業種区分の変更
 農林水産業のうち、軽減税率が適用される食用の農林水産物を生産する事業は第2種事業となります。平成31年10月1日を含む課税期間から適用されます。

その他

■森林環境税(仮称)の創設
 平成36年度より、国内に住所を有する個人に対して年額1,000円を、個人住民税と合わせて徴収されます。

■国際観光客税(仮称)の創設
 国外へ観光で出国する際に、出国1回につき1,000円が課税されます。平成31年1月7日以後の出国に適用されます。

■たばこ税の見直し
 国及び地方のたばこ税の税率を1本あたり3円引上げ。平成30年10月1日より1本あたり1円ずつ3段階に分けて実施されます。また、加熱式たばこの課税区分を新設した上で、その製品特性を踏まえた課税方式に見直されます。

■国税のコンビ二納付
 国税のコンビ二納付について、自宅でQRコードを出力することにより行うことができるようになります。平成31年1月4日以後の納付から適用可能です。

■大法人に対する電子申告の義務化
 大法人の法人税及び地方法人税の申告については、電子申告によることが義務付けられます。添付書類についても、電子情報処理組織を使用する方法又は光ディスク等による提出が義務付けられます。平成32年4月1日以後に開始する事業年度から適用されます。

 平成29年12月22日に閣議決定された平成30年度税制改正の大綱における個人所得課税の概要について抜粋いたしましたので、今後の事務の参考としてください。
(財務省ホームページ「平成30年度税制改正の大綱」より)

(1) 給与所得控除の見直し
     @ 控除額を一律10万円引き下げる。
A 給与所得控除の上限額が適用される給与等の収入金額を850万円、その上限額を195万円に引き下げる。
(2) 所得金額調整控除
  @ その年の給与等の収入金額が850万円を超える居住者で、特別障害者に該当するもの又は年齢23歳未満の扶養親族を有するもの若しくは特別障害者である同一生計配偶者若しくは扶養親族を有するものの総所得金額を計算する場合には、給与等の収入金額(その給与等の収入金額が1,000万円を超える場合には、1,000万円)から850万円を控除した金額の10%に相当する金額を、給与所得の金額から控除する。
A 上記@の所得金額調整控除は、年末調整において、適用できることとする。
(3) 基礎控除の見直し
  @ 控除額を一律10万円引き上げる。
A 合計所得金額が2,400万円を超える個人についてはその合計所得金額に応じて控除額が逓減し、合計所得金額が2,500万円を超える個人については基礎控除の適用はできないこととする。
B 上記@Aの見直しの結果、基礎控除の額は次のとおりとなる。
合計所得金額が2,400万円以下である個人48万円
合計所得金額が2,400万円を超え2,450万円以下である個人 32万円
合計所得金額が2,450万円を超え2,500万円以下である個人 16万円
(4) 上記(1)から(3)までの見直しに伴う所要の措置
  @ 同一生計配偶者及び扶養親族の合計所得金額要件を48万円以下(現行: 38万円以下)に引き上げる。
A 源泉控除対象配偶者の合計所得金額要件を95万円以下(現行:85万円以下)に引き上げる。
B 配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額要件を48万円超133万円以下(現行: 38万円超123万円以下)とし、その控除額の算定の基礎となる配偶者の合計所得金額の区分を、それぞれ10万円引き上げる。

(注)上記(1)から(4)の改正は、平成32年(2020年)分以後の所得税について適用する。

〜給与所得控除から基礎控除への振替(イメージ)〜

 

 
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