中小企業者に係る法人税の軽減税率が延長される!

法人会の改正要望実現ヘ

政府は、平成28年12月22日に平成29年度税制改正大綱を閣議決定しました。
賃上げの促進や「攻めの投資」を支援するため、 中小企業者について、法人税の軽減税率の延長や所得拡大促進税制の拡充、研究開発税制の見直し等が盛り込まれました。

法人税関係

■中小企業者に係る軽減税率の延長
中小企業者について、年800万円以下の所得に係る法人税率を15%に軽減する措置が2年間延長されます。

■所得拡大促進税制の拡充
中小企業者について、現行の支援措置(24年度からの給与増加額の10%税額控除)に加え、前年度比2%以上賃上げした企業は、前年度からの給与増加額の12%税額控除を受けることができます。これは、従来に比べて倍以上の税額控除となる可能性があり、中小企業者にとって朗報です。

■研究開発税制についての見直し
研究開発費(試験研究のための人件費や経費など)の一定割合(現行12%)を法人税額から控除する研究開発税制について、研究開発費の増加率が5%を超える場合には、最大17%まで控除割合を上乗せする仕組みが新たに導入されます。また、控除できる上限について、現行法人税額の25%までのところ、研究開発費の増加率が5%を超える場合には、最大10%上乗せ(最大35%まで)する仕組みも導入せれます。

■中小企業向け設備投資促進税制の拡充
中小企業投資促進税制における生産性向上設備に係る即時償却について、その対象資産に全ての器具備品及び建物附属設備が加えられます。取得価額までの即時償却と、その取得価額の7%(中小企業者等は10%) の税額控除との選択適用が可能です。

■地域中核企業向け設備投資促進税制の創設
企業立地の促進等による地域における産業集積の形成及び活性化に関する法律の改正を前提に、一定の地域内に特定地域中核事業施設を新設又は増設した場合に、その設備投資について特別償却又は税額控除が認められます。

■確定申告書提出期限に関する延長特例の見直し
法人が会計監査人を置いている場合、定款の定めなどを勘案して、各事業年度終了の日の翌日から4ヶ月を超えない範囲で申告期限が延長できます。従来に比べ1ヵ月の延長で、株主総会の時期などについて自由度が高まります。

所得税関係

■配偶者控除・配偶者特別控除の見直し
控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者がいる場合に適用する配偶者控除が次の通りとなります。なお、合計所得金額が1,000万円を超える者については、配偶者控除が適用できないことになります。

居住者の合計所得金額 控除額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

また、配偶者特別控除の対象となる合計所得金額は38万円超123万円以下に変更になります。(現行は38万円超76万円未満)この改正により、配偶者の給与収入額が150万円までは、38万円の控除が利用できる可能性があります。本改正は、平成30年分の所得税から適用されます。

■積立NISA制度の創設
非課税累積投資契約に対する非課税措置(積立NISA制度)を創設して、従来のNISA制度と選択して適用することが可能となります。積立NISA制度の年間投資上限額は40万円で、非課税口座開設から20年間、その口座の配当等について所得税及び住民税が非課税となります。

相続税・贈与税関係

■事業承継税制の見直し
災害等の発生前に事業承継税制の適用を受けていた会社又は受けようとしていた会社については、被害の程度に応じて、雇用確保要件を免除すると共に、災害の被害を受けた会社が破産等をした場合には、経営承継期間内でも猶予税額が免除されます。
雇用確保要件について、相続開始時又は贈与時の常時使用従業員数に100分の80を乗じて計算した数に端数が生じた場合に切り捨てることになります。現行は切り上げ計算でしたので、小規模企業にとっては、有利に計算される場合があります。
事業承継税制と相続時精算課税の併用が可能となります。事業承継税制は、雇用確保要件などで取消が大きなリスクでしたが、相続時精算課税と併用することで、2,500万円の控除と税率が20%で済むことでリスクヘッジが可能となります。
基本的には平成29年1月1日以後に相続・贈与により取得する財産に係る相続税又は贈与税について適用されます。なお、一定の経過措置が講じられる予定で、それ以前の相続税又は贈与税についても対象になる可能性があります。

■国外財産に対する相続税等の納税義務の範囲の見直し
国内に住所を有しない日本国籍を有する相続人に対する相続税の納税義務について、国外財産を課税対象外とする要件が、被相続人及び相続人が相続開始前10年以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこととされました。現行は5年以内ですから、ずいぶん厳しい要件となります。本改正は、平成29年4月1日以後の相続又は贈与に対する相続税又は贈与税について適用されます。

その他

■タワーマンションに対する固定資産税・不動産産取得税
タワーマンション節税が問題視されていることを受けて、タワーマンションについての固定資産税・不動産取得税について、単純な面積による計算ではなく取引単価に応じた補正を行うことになりました。一般的に上層階は増税、下層階は減税されることになります。

■車体課税の見直し
自動車重量税については、燃費基準を見直し2年延長されます。また、自動車取得税に対するエコカー減税、自動車税におけるグリーン化特例についても、燃費基準を見直し2年間延長されます。

平成28年12月22日に閣議決定された平成29年度税制改正の大綱における個人所得課税の「配偶者控除及び配偶者特別控除の見直し」について抜粋いたしましたので、今後の源泉所得税事務の参考としてください。
(財務省ホームページ「平成29年度税制改正の大綱」より抜粋)

1 配偶者控除
控除対象配偶者又は老人控除対象配偶者を有する居住者について適用する配偶者控除の額を次のとおりとする。なお、合計所得金額が1,000万円を超える居住者については、配偶者控除の適用はできないこととする。

居住者の合計所得金額 控除額
控除対象配偶者 老人控除対象配偶者
900万円以下 38万円 48万円
900万円超950万円以下 26万円 32万円
950万円超1,000万円以下 13万円 16万円

2 配偶者特別控除
配偶者特別控除の対象となる配偶者の合計所得金額を38万円超123万円以下(現行:38万円超76万円未満)とし、その控除額を次のとおりとする。なお、現行制度と同様に、合計所得金額が1,000万円を超える居住者については、配偶者特別控除の適用はできないこととする。

@ 合計所得金額900万円以下の居住者
配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超85万円以下 38万円
85万円超90万円以下 36万円
90万円超95万円以下 31万円
95万円超100万円以下 26万円
100万円超105万円以下 21万円
配偶者の合計所得金額 控除額
105万円超110万円以下 16万円
110万円超115万円以下 11万円
115万円超120万円以下 6万円
120万円超123万円以下 3万円
   

 

A合計所得金額900万円超950万円以下の居住者
配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超85万円以下 26万円
85万円超90万円以下 24万円
90万円超95万円以下 21万円
95万円超100万円以下 18万円
100万円超105万円以下 14万円
配偶者の合計所得金額 控除額
105万円超110万円以下 11万円
110万円超115万円以下 8万円
115万円超120万円以下 4万円
120万円超123万円以下 2万円
   

 

B合計所得金額950万円超1,000万円以下の居住者
配偶者の合計所得金額 控除額
38万円超85万円以下 13万円
85万円超90万円以下 12万円
90万円超95万円以下 11万円
95万円超100万円以下 9万円
100万円超105万円以下 7万円
配偶者の合計所得金額 控除額
105万円超110万円以下 6万円
110万円超115万円以下 4万円
115万円超120万円以下 2万円
120万円超123万円以下 1万円
   

 

3 給与所得者の扶養控除等申告書等の整備
上記1及び2の見直しに伴い、給与所得者の扶養控除等申告書、給与所得者の配偶者特別控除申告書及び公的年金等の受給者の扶養親族等申告書についてその記載事項の見直しを行う等の所要の措置を講ずる。
(注)上記の改正は、平成30年分以後の所得税について適用する。
税の歴史クイズ 《税務大学校HPより》

【問】 昭和22年の「申告納税制度」導入以前の所得税は、納税者が税務署に報告した所得金額を基に、税務署による一次調査、所得調査委員会による二次調査を経て税額が決定されていました。これを「所得調査委員制度」と言い、所得調査委員は納税者の中から選挙で選出されていました。
それでは、次の@からBのうち、大正14年に横浜税務署管内で行われた所得調査委員選挙で実際に選出された人は、どなたでしょう。

@ イギリス人の貿易商 A女性の教員 B中国人の飲食店経営者


*答えは、欄外に記載しています。

【答え】 @イギリス人の貿易商

 大正14年に横浜税務署管内で所得調査委員に選出されたのは、マーシャル・マーテン(C. K. Marshall Martin)というイギリス人の貿易商でした。

 
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