ここで賃金制度の改定に伴った不利益変更について、裁判所が実際に判断したケースを見てみましょう。
一つは不利益変更が否認されたケースです。この事案について、変動給制度を導入した制度の改定そのものは「業績の悪化に伴いこの制度を導入する経営上の必要性があったことは肯定できる」としたものの、「多くの従業員が実際に不利益を受けることとなった」にもかかわらず、「代償措置その他関連する労働条件の改善がされておらず(中略)現に雇用されている従業員が以後の安定した雇用の確保のためにはそのような不利益を受けてもやむを得ない変更であると納得できるものである等(中略)の合理的な内容と認めることもできない」として否認されたのでした。(アーク証券事件平成8年12月11日東京地裁決定)
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これに対し、同じような変動給制度を導入し、認容されたケースもあります。この事案において、制度の導入にともない「評価が低い者は不利益となるが、普通程度(筆者注:5段階評価におけるB以上)の評価の者には(賃金減額分の)補償制度もあり、八割程度の従業員は賃金が増額している」点を指摘し、さらに「(2年連続で)赤字経営となり、収支改善のための措置が必要となったことで、賃金制度改定の高度の必要性があった」との判断を下しました。(ハクスイテック事件平成12年2月28日大阪地裁判決)
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