試用期間における解雇
試用社員の本採用拒否は、正社員の解雇より緩やかだといわれています。でも、これだって運用を間違えたら・・・

試用期間って何?
 試用期間とは、労働法の解説書には「解約権留保付雇用契約」(?!)などと書かれています。わかりやすく言えば、将来長期にわたって雇用されることを前提とし、
採用した従業員の能力や資質が当社の社員としての適格かどうかを判断して本採用するかどうかを決めるための期間です。

本採用拒否は解雇よりは緩やか
 一般に本採用拒否事由は、(1)出勤率が悪い(2)協調性がない(3)必要な能力が不足しているなど、通常の解雇自由とさほど違いがあるわけではありません。しかし「試用期間中の解約権留保は、採用決定後における調査や観察に基づく最終決定を留保する趣旨でなされるものであり、したがって、
留保解約権に基づく解雇は、通常の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められてしかるべき」(日和崎石油事件平成2.1.22大阪地裁決定)であるので、正社員(試用期間経過後の社員)の解雇よりも広い範囲において解雇の自由が認められているとされています。

とはいうものの・・・
 「通常の解雇よりも広い」とはいえ、同時に会社としては試用期間中の社員に対しての教育の義務があり、何ら教育や指導をせずに「従業員として適格性がない」と判断するのは許されません。
「注意指導し、なおかつ矯正不能の非難があるならば、学園からの排除もやむを得ないであろうが(中略)一度も、校長や先輩教師から注意を与えられたことがない」(麹町学園事件昭和46.7.19東京地裁判決)場合、裁量権の濫用とされたケースもあります。

試用期間の実際
 実務においては新卒や若い従業員を採用したときには、就業規則や雇用条件通知書に試用期間について明示するだけではなく、その意味についても説明する必要があるでしょう。ある会社では試用期間経過にあたってその従業員に「本採用になる」 旨を通知し、「今後も当社で働く意思があるか」確認しているところもあります。もちろん儀礼的なものではありますが、試用期間を実体あるものとして活用するためには必要なことでもあります。

試用期間はキチンとしよう
 会社によっては中途採用者に対しては試用期間を設けていないことがありますが、よほどその人の能力や適性などがわかっている場合はともかく、そうでなければやはり試用期間は適用すべきです。ときどき「試用期間中と本採用では(一部の手当を支給しないなど)賃金に差がある。そのため、特に年齢が高い中途採用者に試用期間を設けると賃金が低くなってしまうのですぐに本採用扱いにせざるをえない」という会社もあります。

 しかし、試用期間は先に述べたように従業員としての適格性を見るための期間です。
 試用期間と賃金の処遇は切り離し、賃金規程のほうで「試用期間中でも支給することがある」と定め、試用期間は一律に適用するのがトラブルを防ぐためには必要でしょう。


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