解雇と退職
労働者「僕は会社から解雇された」
会社側「あいつは勝手に辞めていったんだ」

解雇と退職では失業給も違ってくる
 従業員が会社を去るとき、それが「解雇」なのか「退職」なのかでトラブルになることが多くなりました。とくに最近では雇用保険の失業給付が、「解雇」なのか「退職」なのか、
さらに「退職」でもその理由によって給付がまったく違ってくるために、退職の性質をめぐって従来以上のトラブルになることが少なくありません。

解雇と退職、ここが違う
 「解雇」は事業主からの一方的な意思表示により、従業員との雇用関係を終了させるものです。解雇事由に正当性があり、労働基準法で定めた予告期間をおくか、予告手当を支払うことで解雇は成立します。

 それに対し「退職」はその性質からいくつかに別れます。

 一つは「辞職」で、従業員からの一方的な意思表示により雇用関係を終了させるものです。次が「当然退職」で、「定年」や「死亡」など一定の事由が発生すると自然に雇用関係が終了するものです。最後が「合意退職」で、従業員と使用者が双方とも雇用関係を終了させることに合意したときがこれにあたります。

けっこう多いぞ、「合意退職」のトラブル
 ここで問題になるのが三番目の「合意退職」です。
 会社としては双方が退職に合意して従業員がやめたと思っていたのに、あとから「合意退職ではなく解雇された」と主張されることがあります。
具体的には「『いやなら辞めろ』といわれたから辞めた」「『退職届をだせ』と脅かされた」というようなケースです。

裁判のケースを見てみると
 実際の裁判例では、「残業手当の請求を放棄するか退職するか」といわれて退職したときのケースで、この「発言は、残業手当の請求権を将来にわたり放棄するか退職するかの二者択一を迫ったものであって、かかる状況で原告が退職を選んだとしても、これはもはや自発的意思によるものであるとはいえない」(丸一商店事件大阪地裁平成10年01月13日判決)として解雇であるとの判断を下しました。  別の事件では「三十数回もの「面談」「話し合い」を行い(中略)別の道があるだろうとか、寄生虫、他の従業員の迷惑、とか述べ、原告がほとんど応答しなかったことから、大声を出したり、机をたたいたりした」ケースで、このような「言動は、社会通念上許容しうる範囲をこえており、単なる退職勧奨とはいえず、違法な退職強要」(全日本空輸(退職強要)事件大阪地裁平成11年10月18日判決)であると判断されたケースもあります。

退職は文書で
 これらのケースから、会社側から退職を奨めるときにはあとから「言った」「言わない」とか「あの時こう言った」ということでトラブルになることが理解できると思います。

 退職勧奨をするときは話し合いを紳士的に進めると同時に、話し合いの内容、退職における合意事項(退職日、退職事由など)を文書にして本人に交付すること。退職届も単に「○月○日に退職します」というものではなく、

「退職勧奨について合意」した旨を書いてもらい、さらに会社としてその退職届を受理した旨の文書の交付(実務的には提出してもらった退職届をコピーして、「○月○日に受理」と書いて渡す)まで必要になります。

 一見すると非常に手間がかかると思われるかもしれませんが、中小企業のトラブルの多くは「口頭」によるものです。退職に関わらず、労務管理を文書化することは必要なことです。


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