
MASAYASU TZBOGUCHI
ANDROGRAFFITI
| 坪口昌恭(Masayasu Tzboguchi) | :Keyboards, Modular Synthesizer, Kalimba |
| Yosvany Terry Cabrera | :Soprano & Tenor Sax |
| Micheal Rodoriguez | :Trumpet |
| Charles Flores | :Electric & Acoustic Bass |
| Pedro Martinez | :Percussions |
| Horacio "El Negro" Hernandez | :Drums |
| 1.M.T. Swallow | ['6"48] |
| 2.Space Mbira | ['7"25] |
| 3.Equator Civilization | ['7"07] |
| 4.Water Moon | ['7"28] |
| 5.Groove Continent | ['8"20] |
| 6.Vanilla Beans | ['5"37] |
| 7.Swinging Weather | ['9"52] |
| Total | '53"10 |
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Produced by Masayasu Tzboguchi
Composed, Direction and Arranged by Masayasu Tzboguchi
http://www.jah.ne.jp/~tzbo
Artwork by Junya Kano
A&R:Kazuki Takami (ewe inc.)
Executive Producer : Yukio Morisaki (ewe inc.)
Special Thanks :
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| ¥2,190(税抜き)、EWBE 0019(Body Electric Records) |
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■はじめに 赤い「VIGOROUS」と緑の「ANDROGRAFFITI」。きつねとたぬきじゃないが、New Yorkレコーディングから1年半、ようやくその全貌が出そろう。二つに分けた理由は、当初1枚の予定がセッションを始めて見たら盛り上がって計100分を越え(そりゃそうだ、13曲もあったら収まるわけがない)、どうせならはっきりとキャラクターが異なるように振り分けるのも面白いだろうということで。「VIGOROUS」が楽曲主導のアッパーなアンサンブル路線だとしたら、「ANDROGRAFFITI」はスローものを含んだアブストラクト路線ということになるが、期せずして作曲した時期によっても分けられる形となった。'90年代後半『坪口昌恭PROJECT』のレパートリーとしてワンホーン・カルテットを想定して作られた曲が半数を占めた一作目に対し、二作目はTZB発足以降、より“自分自身”を見つめ直した結果出てきたアイデア(新曲)が大半を占めている。特に、導入したてのモジュラー・パッチ・シンセサイザーを使い、それに基づいてNYのメンバーと共にインプロヴァイズできたのは、今回のトピックだったと言えるし、今後の音楽性を示唆する体験であった。とはいえ、便宜上2枚に分けてリリースするというだけで、自分の中では“VIGOROUS+ANDROGRAFFITI=13曲”まとめて一作品だと思っている。是非2枚とも買っていただき、一度は曲順通りに聴いた後、iPodに2枚分入れてShuffleして聴いてみるのはいかがでしょうか。
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■タイトルについて “ANDROGRAFFITI”は見ての通りANDROIDとGRAFFITIを組み合わせた造語で、「アンドロイドが描く落書き」という意味。アンドロイドが一生懸命人間のすることを真似て絵を描こうとしてるのだが、どこか妙でユーモラス。とんでもなく精巧に描かれていると思ったら遠近感はおかしかったり。そもそも落書きというのは、内容はともかく、描いてはいけないような場所に描いてあるから落書きなんだよな。NYのあちこちで見られるウォール・ペインティングやタギングの印象も反映されているかも知れない・・・このアルバムにはそんなスポンテーニアス、サイバー、ストリートな感覚が渾然一体となって詰まっているはず。そういえばアンドログラフィティ→アンダーグラウンドに似ていないか。
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■曲目について 1.M.T.Swallow 1995年に、自分名義初のアルバム「M.T.Man」をリリースした。M.T.Manとは小学時代に設定した自己の特撮ヒーロー像だ(特撮って、誰に撮影してもらうつもりだ?)。そして将来一皮むけたときにM.T.Swallowになるんだということも決めていた。実はアルバム「M.T.Man」の曲目解説で、このことは既に明言している<参照>。で、いつの日かM.T.Swallowにバージョンアップすべく精進?してきたわけだが、今回のNYレコーディングで大きな感動があったし自分の中で納得いくものができたので、男40歳を過ぎてそろそろ変身しても良いかと。まあ、いまだに幼少時のコンセプトを継続していること自体、自分でもあきれるが(笑)、トルコ軍楽に影響を受けたM.T.ManとサイバーでストイックなM.T.Swallowを聴き比べれば、多少大人になったということはわかっていただけると思う。 この曲のように“打ち込みのリズムを伴って、キーボードとソプラノ・サックスが戯れる”といったスタイルは、自分らしさがダイレクトに発揮できる形態のようで、思えば'80年代半ば大学時代からやっていた。そんなわけで“M.T.Swallow=自己の音楽性を総括したタイトルチューン”と言っても過言ではない。冒頭からピコピコいってるのがモジュラー・シンセで、チョッパー・ベースとワウ・ギターのサンプルも自分で弾いたもの。
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2.Space Mbira ジャズは元々、アフリカのリズムや旋律が、ヨーロッパの12平均律や和声と出会って誕生したといわれている。そうやって発生したジャズがもう一度アフリカに回帰し、更にはそこから宇宙に戻っていくような、そんなイメージの曲(僕の音楽性全般を象徴していることだが)。そのためにはムビラという楽器が欠かせなかった。ムビラは別名カリンバ、サンザ、フィンガーピアノ、親指ピアノなどと呼ばれるアフリカの調律体鳴楽器。よく雑貨屋にも置いてあるので珍しくはないが、真ん中が一番低く左右に音が高くなっているという構造自体が珍しい。 この曲はテーマ1コーラスが107小節という長いもので、反復なしに常に展開してゆくという(無形式な)形になっていて、“ジャジーなグルーブがありながら、メロディーやハーモニーはとりとめなく進んでいく感じ”が面白いと思っている。1コーラスで終わらせる予定が、自然な流れで2コーラスになり、トラックとして妥当なサイズになった。リードシンセはARP Odyssey。
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3.Equator Civilization “集団即興 with モジュラー”一曲目〜テーマは「アフロ・キューバン」。モジュラーシンセで作ったポリ・グルーブなトラックを聴きながら、オラシオ、ペドロ、チャールズ、僕の4人でセッション。ルールは、「アフロ・キューバンのフィーリングはキープしながらそれぞれバラバラのテンポで演奏する」こと。彼らの“地で湧き出てくる”キューバン・グルーブの中で、自由に泳がせてもらった。以下、三曲ある集団即興シリーズは、マルチ・グルーブ(複数のテンポが共存する)の手法を用いているわけだが、モジュラーシンセがそれらの触媒になっているというところがポイント(しかもモジュラーはミックス段階で部分的にミュートしている)。中盤以降出てくる派手なシンセは、やはりARP Odyssey。
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4.Water Moon レコーディング3日目に初めてマイケルがスタジオにやってきて、初対面で真っ先に録音したのがこれ。念願のトランペット&ローズDUOだ。マイケルのトランペットは無垢な感じがイイ。バックに薄く、パーカッション・サンプルの数々をランダムに鳴らすことで、水中で演奏しているかのような雰囲気を作っている。初期TZBで、五十嵐一生(Tp)をフィーチャーして演奏していたこともある曲。
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5.Groove Continent “集団即興 with モジュラー”二曲目〜テーマは「メロディアス」。ヨスバニー、マイケルも加わったフル・メンバーで、「作曲するかのように歌心のあるメロディを演奏する」というルールを設定して演奏。しかも、モジュラーと各自の音以外はモニターに返さずに演奏するように指示した。ところがドラムとベースは同じフロアにいたので、ぴったりと合わせてグルーブしてしまった(苦笑)。なるほど、リズム隊にとって「メロディアス」ということは、しっかりとグルーブすることだったのかも知れない。それならばそこを強調しようとばかりにクラビネットをダビングした。アフロがルーツにある証拠に、自然と6/4拍子になっているのがうれしい。グルーブ大陸万歳!!
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6.Vanilla Beans 日本にいて良いと思うことの一つは、豆からできているものが美味いことだ。大豆からできる醤油、味噌、納豆、豆腐のすばらしさよ。ぜんざい、おしるこの類(こっちは小豆ね)がメニューにあれば必ず注文する。ついでに言えば紅茶よりはコーヒー党。というわけで、偉大なる豆!に感謝の意を込めたタイトルだが(他でさんざん地球規模のタイトルを付けてきたのに豆かよ・笑。でも地球も丸ければ豆も丸い)、実はこれ、ライブ後や何か一仕事終わったときによく行く、お気に入りのレストラン・バーの名前でもある。その店には、だいたいにおいて深夜に行くので、ミッドナイト・サバービア(大都市郊外)なイメージがこの曲にぴったりだ。それもそのはず、この曲は2002年にJJazzNetからの依頼でInterFM深夜ジャズ番組のエンディングテーマとして作曲したもの(当時は一人多重)。そういえば、この曲のエディットをおこなっている最中に、サバービアンな暮らしが大好きな菊地雅晃(Bass)が家に遊びに来て、「クラビネットに深いディレイをかける」というアイデアを提供してくれた。豆を食べながらトリップしよう!
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7.Swinging Weather “集団即興 with モジュラー”三曲目〜テーマは「ジャジー&スインギー」。これもモジュラーと各自の音以外はモニターに返さずに演奏し、各々の語り口がぶつかり合う効果を狙っている。セッション時はローズで、アコピは後でダビングした。タイトルは「スイングする天候」。地球温暖化が原因なのか、異常気象が後を絶たないが、それもマクロな視点で見れば、上がったら下がる、下がったら上がるというスイングの法則?により、大自然も調和をとろうとしている結果なのだろう。それで人類がどうなってしまうのかはわからないが…。
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■おわりに 「ANDROGRAFFITI」が仕上がって、30代までの締めくくりが完了したと同時に、40代以降の展開を予想するような要素(選択肢)の詰まったアルバムができた。僕が普段携わっている数々のユニットでは表現できない、そしてそれらのいずれとも関連性のある音楽が表現できたと思っている。TZBをはじめとする菊地成孔氏とのさまざまな活動経験がこのアルバムにつながったことは言うまでもない。モジュラー・シンセに関しては、FiveG安藤岳志氏のアドバイスが大きかったし、藤原大輔氏、パードン木村氏、三沢泉とのセッションによって鍛えられ、この1年で随分スキルアップした。ジャケ表紙は、今度こそby myselfではなく(笑)“モノクロで暗い写真しか撮らない”というNY在住カメラマン、ヒビさんに撮っていただいたもの。でも、鏡に映っているから、またもや左右逆だ。そして、TZB自主制作盤からずっとジャケットを手がけてくれているデザイナーの狩野君。一からデザインする才能に長けた彼が、写真をふんだんに使いたいという僕のわがままを聞いて、ナイスなジャケットを作ってくれた。丁重なやりとりでパッケージングを進めてくれたewe西澤嬢の影の力も忘れてはならない。最後に、このNY2連作を作るきっかけを与えてくれたオラシオとewe高見氏には、改めて感謝の意を表したい。やりたい放題のリーダー作をNYで録音できて、こうして2枚揃って世の中に発表できるなんて、自分は幸せ者だと思う!
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CD Review ■JAZZ LIFE 2006年2月号 <Disc Review> 「クールで情熱的、慎重で大胆。素晴らしく新しい音楽」 昨年発売の『ヴィゴラス』とペアになるアルバムがようやく登場である。これで一昨年ニューヨークで録音された坪口昌恭とマルティネス、エルナンデスら御馴染みのキューバ系ニュー・ウェイヴとのセッションの全貌がようやく明らかにされた。前作『ヴィゴラス』はフュージョン・アルバムと言っていたが、こちらはもっと抽象的な色彩の強い演奏を集めている。とはいえ、これはあくまで便宜的な区分けであって、その境界は、さして重要ではないかもしれない。ラテン・ジャズ・フュージョンとか先鋭的なエレクトロニクス・ジャズといったイメージから入ると、おそらくこの坪口プロジェクトの本当の面白さを見逃すことになるだろう。たとえば、エルナンデスたちはラテン・リズムを叩くからラテン・ミュージシャンではなく、むしろそうした紋切り型の世界に安住できないところに彼らの新しさ素晴らしさがある。また、エレクトロニクスを使っているからジャズではなくフュージョンとか、コードには限界があるから、未知の世界に向かうにはそこから離れなければといった常識でこの坪口プロジェクトを耳にすると、そうした常識や思いこみのウラを分け入り、八方に広がるこの音楽家の関心のムコウにあるものが見えてこないだろう。端的に言えば、菊地成孔と東京ザヴィヌルバッハを組織する坪口のこの音楽は、ザヴィヌル、マイルス、ハンコックの延長にある。むろん、状況はかつてより遙かに錯綜し、表層を飾る新しいマテリアルはたくさんある。そうした現代の混濁の中からクールで情熱的、慎重で大胆なこの音楽家が、共に身をはり、拾い上げ、化粧を施したこの音楽は、どうしようもなく今である。(青木和富)
■CD Journal 2006年2月号 <今月の推薦版>
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