日本は今不況のどん底です。
バブルの崩壊から、一時は立ち直り掛けたかに見えましたが、今や倒産が日常茶飯事となっています。
原因は去年4月からの消費税率引き上げと言われています。
不況下の増税で、消費はすっかり萎縮してしまいました。
更に市場が拓銀や山一を倒産に追い込み、破綻企業が出る毎に、
マスコミが次に倒産するのはここだという特集を組んでは、不況感をあおっています。
すっかり悪役となった消費税ですが、ここでは私なりに消費税を擁護したいと思います。
国家が必要であるなら、何らかの費用調達手段が必要です。
どんな小さな集まりでも、みんなで何かしようとする時に、「口は出すが金は出さない」では、仲間にしてもらえません。
問題は、どうやって費用を分担するかという方法です。
現在の税金は、所得税・法人税が中心になっているので、それとの比較で考えてみます。
所得税は、所得の高い人は多く、少ない人からは少なく払う税金で、うまく機能すればすばらしい方法ですが、
次のような点が問題視されています。
国税50%+地方税15%で、何と所得の約2/3が税金で、手元には1/3しか残りません。
いくら稼いでいるからと言っても、これでは、江戸時代の悪代官よりもっとひどいと言えます。
働いても殆ど税金で取られるなら、働くのがバカらしくなるし、野球選手が脱税で引っかかるのも
税金の高さが誘因となっています。
スウェーデンなど、社会保障の充実した国から、国外へ脱出する例がありますが、
国際人であれば、日本に籍を置く必然性もなく、所得の高い人が税金の安い海外に籍を移すと、
結果的に残った私たちの負担が更に増えることになります。
最高税率の引き下げは、とかく金持ち優遇と非難されますが、貧しい私達の自衛手段とも言えます。
消費税は高いと言っても、地方税分を合わせてもまだ5%で、海外と比べ最も低いレベルです。
最近導入したオーストラリアは低い方ですが、それでも10%です。
所得税の問題点として、所得が正しく申告されないという点があります。
サラリーマンは、会社で源泉徴収されるので、副業がない限り、所得をごまかすことはできません。
しかし、自由業などの場合、正しく申告する人ばかりではありません。
不動産の売買などがあれば、税務署も調べますが、人手不足で殆ど手が回らないのが実状です。
その点、消費税は、誰でも何か買う時は払わざるを得ないので、公平だと言えます。
確定申告をする場合、税金は後で払うことになるので、預金するなどして取っておかないと、
納付期限に払えなくなります。
いつかテレビで、事業に失敗した芸能人を紹介していましたが、今はお金がなくても、
前年の収入が多かったら、その分は払わなければならず、少しずつ分割返済しているとのことでした。
消費税ならそのような心配はありません。
毎月源泉徴収されるサラリーマンも、その心配はありませんが、年末調整で税金が還付
されるということは、月々余計税金を取られているということで、喜んでばかりもいられません。
最近は所得が増えなくなって来ましたが、名目賃金が上がれば黙っていても税率が上がるので、
定期的に税率区分を見直さないと、どんどん税負担率が高まります。
消費税の欠点として、所得の低い人ほど、所得に対する負担率が高い、即ち逆進的だと言われます。
そこで次にこの問題を考えます。
消費税導入に伴い、物品税が廃止されました。物品税は、元々製品価格の中に入っていたので、
取られていたという意識は低いですが、工場からの出荷段階で5〜20%課税されていました。
贅沢品には高税率で課税し、逆進性を緩和していましたが、そこにも問題がありました。
例えば、自動車は贅沢品として20%の最高税率でしたが、バスや電車の少ない地方では
一人に一台ないと生活できない所もあり、決して贅沢品とは言えなくなっています。
消費税導入時には、税率が急に安くなりすぎるということで、3%ではなく6%
の経過措置が設けられました。
何が贅沢品なのか、万人が納得する基準を作るのは極めて困難であり、
商品によって、税率を変えることは、市場をゆがめることにもつながります。
イギリスは食料品に軽減税率を設けています。
生活必需品の税率を低く(ゼロにすることを含め)することは、望ましいように感じられますが、
具体的に何を何%にするかが問題です。
食料品にしても、キャビアは税率が高くても良いような気がします。
また、イギリスの軽減税率でも、日本の消費税率より高く、
複数税率にすると、税の仕組みが複雑になってしまいます。
預かった消費税を納付する時、これは何%、あれは何%と区分して集計するのは、とても大変です。
消費税率が5%になった今でも、過去に契約したリース等は3%のままなので事務が煩雑です。
複数税率にする際には、納税方法を見直さないと現場が混乱を来します。
夏の参議院選挙で、公明党は消費税相当額を商品券で払い戻す案を提唱していました。
食料品にかかる消費税相当額の還付を主張した党もありました。
日経新聞では、馬鹿げたことと一笑に付していましたが、低所得者の負担を減らす為に、
消費税を何らかの形で戻すことは必要です。
所得税が万能でない以上、所得税の減税と、消費税率のアップは避けて通れません。
しかし、消費税率を欧米並の10〜20%とした場合、低所得者層には重くのしかかります。
年金や生活保護を上げることも考えられますが、戻し税が可能であれば、
それに越したことはありません。
今年2度行われる減税にしても、税金を払えない低所得者には何の恩恵もありません。
恒久減税が金持ち優遇に終わらない為にも、何らかの新しい方法が必要です。
細川内閣の時、景気回復の為の減税の財源として、消費税を3%から6%(但、福祉目的税)
にする案が発表され、すぐに撤回するという情けないことになりました。
今回の減税や公共事業の財源は赤字国債となりますが、
既に、国や地方自治体の借金は、国家予算の何倍にも達しており、将来的な増税は避けられません。
所得税や法人税は国際的に見ても減税するしかありませんので、財源は消費税しかありません。
国民年金の不払い者(学生など)が多いことを考え合わせると、いっそのこと年金の基礎部分は
消費税に吸収した方が良いのではないでしょうか。
税率の引き上げは必要になりますが、誰からも等しく集める必要があるものなら、
税金となっても払い込みの方法が変わるだけです。
消費税の逆進性という問題点は、消費税の一定額を還付することにより緩和されます。
例えば年間一世帯平均5百万円使うとすれば、10%の50万円を一律還付する。
方法としては、所得税からの税額控除で還付したりする方法や、
国民総背番号制にして、全員に支給する方法などが考えられます。
事務の煩雑さや、不正の防止など検討すべき点は多いですが、
面倒だからと言って弱者を見捨てることはできません。
恒久減税を約束した小渕内閣は、恒久的減税と言い直し、最高税率50%(国40%、地方10%)
の定率減税を検討しています。
減税で課税最低限が高くなりすぎた為、いずれ低くすることが見込まれます。
各種控除の見直しも検討されるかもしれませんが、少子化が進む現在、
児童手当の支給や、所得控除でなく税額控除による補助の拡大が、
国家的施策として必要です。
増税する前に財政の無駄な支出の削減が必要なのは言うまでもありません。
どこの企業でも、収入が増えない昨今、何割もの経費削減や業務の効率化に取り組んでいます。
大勢の人が路頭にさまよっているのに、足りなくなったら税金を上げれば良いとは行きません。
政府は消費税を直間比率の是正を唱えながら、実質的には増税の手段として導入しました。
そして皮肉にも、3%から5%の税率アップの結果、不況で税収は逆に減ってしまいました。
景気が回復するまでは、税率の更なる引き上げはできません。
景気回復後、消費税を引き上げる際には、所得税の恒久減税を同時に実施し、
納得できる税体系にしてもらいたいものです。