1998年6月8日更新

初心者のための落語塾です。

ここでは現在私が受講している『落語塾』という通信講座に沿ったテーマで落語を紹介してまいりましょう。第1回目のテーマは『落語の歴史』 というものです。


落語の歴史

ここでは私を含めて落語にこれから慣れ親しみたい方を対象にごく上っ面をなめるだけですが勉強してまいりましょう。今回は落語の成立、起源についておさらいしてみましょう。

落語の起源についてはいろいろな説がありますが一般的には戦国時代に武田信玄や豊臣秀吉などの戦国の武将の話し相手をした曾呂利新左衛門(そろりしんざえもん)などが書いた『御伽衆』(おとぎしゅう)という面白本や浄土宗の僧侶だった安楽庵策伝(あんらくあんさくでん)が元和九年(1623年)に完成した『醒睡笑』(せいすいしょう)という書物がその雛形と言われています。しかし実際には江戸時代になってから京都・江戸(東京)・浪花(大阪)の三都において人前で辻噺(つじばなし)という形で今の落とし噺のようなものをやったものが現在の職業落語家の始まりとされています。

その中では大坂の米沢彦八、江戸の鹿野武左衛門、京都の露の五郎兵衛の三人の名前がよく知られています。

その後このような噺しは一度粛正に遭ってすたれるのですが、江戸の後期になってから町の大工の統領だった立川焉馬(たてかわえんば)またの名を烏亭(うてい)焉馬という人が料理屋の二階などに人を集めていわゆる落とし噺しをやったのが現在の寄席にあたるものとされています。この立川門下から三遊亭円生や三笑亭可楽、朝寝坊むらくといった落し噺を専門とする職業芸人が多く輩出しました。ということでこの立川焉馬をもってして江戸落語中興の祖ともいっています。

こうして江戸の文化とともに次第に形を為してきた落語という演芸は更に紆余曲折をとげ、三笑亭可楽(さんしょうていからく)という人の出現をもって完成されたとされています。この可楽という人は元々櫛屋の職人であったのですが、現在も続いている「三題噺」などを始めたとされておりやはりこの門下から三遊亭圓生や林屋正蔵、船遊亭扇橋といった現在の屋号(柳家とか三遊亭とかいう呼び名)に通ずる演者たちが続いていることからも大変重要な人物といえるのでしょう。

その江戸の隆盛を横目にみて、上方でも桂文治(かつらぶんじ)という人が現在の上方落語の元となる噺しを広めたといわれています。この桂派が桂文枝等に引き継がれて現在の上方落語に通じるものを完成させたということです。

その後寛政三年(1791年)に大阪出身の岡本万作が江戸に上って寄席の前身となる興行を行い、いわゆる定席(じょうせき)が催されるようになりました。ここでは落し噺しの他に「色物」と呼ばれる演芸も行われたようです。

明治・大正時代に入ると名人という呼び名にふさわしい三遊亭圓朝が近代落語を完成させ、人情噺しや怪談ものといった語りの落語の発展に大いに寄与しました。しかしこの頃の寄席の客たちは人情噺しよりむしろ滑稽噺しを好んで聞くようになり、そんな雰囲気の中から明治の珍芸四天王(ステテコ踊りの三遊亭圓遊、ラッパ吹きの橘家圓太郎、ヘラヘラ節の三遊亭萬橘、釜掘りの立川談志)と呼ばれる芸人が人気を博すことになるのです。その後、二大流派となる三遊派(三遊亭圓朝の一派)と柳派(柳家燕枝の一派)の分裂を経て落語という演芸は様々な団体を形成しながら発展し、現在の落語協会や落語芸術協会などに受け継がれているのです。

戦後の東京の落語界は僅かに戦災を免れた人形町末広をはじめ、すぐに再建された上野鈴本演芸場、新宿末広亭の三つの寄席だけでスタートしました。つまり落語とは寄席に通って聞くもので、地方の人はほとんど聞くことのできない演芸だったわけです。やがて蓄音機やラジオ、テレビというメディアが出現し落語の普及に大いに寄与しましたが、元来落語という演芸はライブをみてなんぼという世界だったようです。その中からホール寄席というものも盛んになり、現在よく知られている戦後の名人達が輩出する次第なのです。

昭和の名人といわれる五代目古今亭志ん生をはじめ六代目三遊亭圓生、八代目桂文楽、三代目桂三木助、三代目三遊亭金馬等が我々戦後の世代には有名ですがその後談志志ん朝といった現役の師匠たちの動向にも目をそむけることができません。尚蛇足ながら落語家のことは噺家という呼び名で呼ぶ方がぴったりするようなのですが、ここでは一般の呼称の落語家というものを使わせていただきました。

ちょっと後半は駆け足の説明となってしまいましたが戦国時代から現在までの流れをざっとおさらいしてみました。このように落語という伝統芸能には歌舞伎や文楽と同じような歴史があってとても奥の深い古典芸能であるということを知っておけばよいのです。専門に研究される方は以下に参考資料を挙げておきますのでそちらでお勉強してください。

「落語ハンドブック」三遊亭円楽監修・三省堂書店

「古典落語」矢野誠一著・駸々堂書店

「古今東西・落語家辞典」諸芸懇話会・大阪芸能懇話会編・平凡社

「落語名人伝」関山和夫・白水社

「増補・落語辞典」東大落語会・青蛙房

「落語のみなもと」宇井無愁・中央公論社


さて、第1回目はちょっと堅い話題になってしまいましたが、次回は「落語の構成」というテーマでどういったものを落語と呼んでいるのかという辺りを話してみましょう。ではまた次回、お後がよろしいようで。


尚、古い情報で恐縮ですがこれまでに古典落語の話題を取り上げたものはこちらにまとめてあります。よろしかったらこちらもご覧ください。


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