WILL YOU STILL FEED ME, WHEN I'M SIXTY-FOUR?

誰もが老いていくことを逃れることはできない。


(感想文)最近、老いの問題や死についてのテーマで物事を考えることの多い日々が続いていますが、そんな中、『ある老女の物語』というまさにそうしたテーマのオーストラリア映画を観てきました。
この映画は主演の老女優、シーラ・フローランスの生き様を中心にもってきたような映画でした。老齢でガンに冒されて余命いくばくもない一人暮らしの老女を老け役ではない、そのままの演技でアピールしていました。ですからこれは一人の女優のドキュメンタリー映画とも受け取れる内容でした。
物語は老齢ながら自立して生きていこうとする主人公を、地域看護婦という立場を超えて支えていくアンナという看護婦との交流を通して、介護とは何かとか人は歳を取るとどう行動したらよいのかといった問題を提起している内容でしたが、ところどころにユーモアと前向きの姿勢がみてとれて、年寄りの映画というイメージではありませんでした。
しかし、やはり老いはどこかで厄介を引き起こし、醜い肉体をさらすことになります。そういったところをこの監督はありのままに紹介していて、決してきれいごとにしていないところが良かったと思いました。人間、歳を取るととかくわがままになってくるものです。例えば喫煙禁止のレストランに入って、喫煙を注意されると、逆にくってかかるところや、駐車場で用を催し、木陰で用を足すところなどは老人のエゴのようなものをうまく描いていました。そう、年寄りって一面では弱い立場ではあるようですが、反面回りを気にしない存在と化してしまうところが、回りから煙たがれるのかもしれません。
それでも、誰もがそんな存在になっていくのです。普段からきれい好きだった初老の人が段々身の回りのことに無頓着になっていくのが老化という現象です。現代の発達した医学をもってしても、この現象を抑えることはできないのです。ですから十分に体が動けるうちからそうした老化の問題を自分のこととして考え、少しは彼等の立場に立ってみることも大切なのではないでしょうか。21世紀が近づいて、ますます高齢化社会になっていくことが予想される中、自分の身近な年寄りとどう折り合いをつけていくか、真剣に考えても損ではないでしょう。そんなことを反すうしながらやや高齢の方が多かった劇場から帰路に着きました。


ポール・コックス監督、1991年オーストラリア作品。
(キャスト)マーサ:シーラ・フローランス、アンナ:ゴーシャ・ドブロヴォルスカ、ビリー:ノーマン・ケイ、ジョナサン:クリス・ヘイウッド、ピーター:アーネスト・グレイ他

9月27日から岩波ホールにて公開中。


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