1998年1月10日
『スリング・ブレイド』(Sling Blade)
(感想文)この映画の監督兼主人公のビリー・ボブ・ソーントンという人は私の第一印象では『二十日鼠と人間』に主演したジョン・マルコビッチを彷彿させます。役柄が似ているというのではなく、その存在感がそっくりだと思いました。その印象を引きずりながらこのアカデミー脚本賞をとった物語をみていきました。
母親とクラスメートの情事を目撃し、二人を殺害してしまい、精神病院に入っていたカール(ビリー・ボブ・ソーントン)が故郷に戻り、ただ一人フランクという少年と出会い、心を通わせる。そして母親のリンダに頼んで自分の家のガレージに住むことを許してもらう。だがその母親の恋人でちょっと粗野なバンド・マン、ドイルがこのカールとフランクの間に入り込んできて、じゃまをする。そして最後はちょっとショッキングな結末で幕を閉じる、という粗筋なのだが、『ファーゴ』などと比べ同じ殺人でも視点が違っていて私はこちらの方がよかったと思いました。周りで『ファーゴ』擁護派の多い中、唯一人「あれは嫌いだ」と言い続けている私ですが、とにかく意味もなく次々と人を殺す映画なんて少しも面白くないのです。
そこへいくとこの映画の殺人にはいろいろと意味を持たせているようで、『デッドマン・ウォーキング』や『フィーリング・ミネソタ』などと同じテーマを内包しているように思えます。アメリカの片田舎の風土と精神の疾いによって引き起こされる事件なのですが、その間の少年との交流などに一応、救いがあったように思えました。只、主人公のエロキューションに変な演出がみられ、もっと普通に話してもその効果はあるシナリオだと思えたのですが、どうなのでしょうか。
それにしてもアメリカ映画はこの映画にみられるような無垢の精神に対する救済を目論んだテーマが多いような気がしました。またまたこじつけで恐縮ですが、初期のコッポラの映画に『雨の中の女』とかいう小編がありましたが、そこに出てくるイノセント・マンもこの『スリング・ブレイド』のカールのような役回りだったと記憶しています。
ちょっと本筋からはずれますが、この映画に出てくる史上最悪のバンドのメンバーの中にいつか健太さんのHPで紹介していたヴィグ・チェスナットが車椅子で出演していたのにはちょっと驚きました。実際はオーディションでプロの有名なミュージシャンを抜擢したとのことで、この辺にもミュージシャンでもあるソーントンの面目躍如といったとことが窺えます。又、カールの父親役で名優ロバート・デュバルの演技も見れて、細かいところでも見ごたえの多い映画なのではないでしょうか。お正月なのにガラガラの館内でしたので宣伝を兼ねてお薦め作品としておきます。
ビリー・ボブ・ソーントン監督、1996年アメリカ作品。
(キャスト)カール・チルダース:ビリー・ボブ・ソーントン、ドイル:ドワイト・ヨーカム、ヴォーン:ジョン・リッター、フランク:ルーカス・ブラック、リンダ:ナタリー・キャナディ、カールの父:ロバート・デュバル他
12月20日から恵比寿ガーデン・シネマにて公開中。
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