2002年1月14日
『アメリ』
(感想文)今年に入って5本目の映画は『当り!』でした。『アメリ』は実に語るに多い「幸せになる」映画でした。
先ず導入部分から気に入ってしまいました。アメリの少女時代(この子役もキュートで可愛い)の紹介が気が利いていて面白いのです。アメリのお父さんの嫌いなもの:連れション、サンダル姿を人に見られること、体に張り付いた水泳パンツ、好きなもの:壁髪を大きくはがすこと、工具箱を整理すること、アメリのお母さんの嫌いなこと:風呂に入りすぎて手にしわがつくこと、寝起きにシーツのあとが顔に付くこと、好きなこと:フィギュア・スケートの選手、床を磨くこと。そんな紹介で家族の紹介をするセンスが先ずよかったです。当のアメリ誕生の瞬間も意表をつく描写で感心しました。あまり心を開こうとしない医師のパパから初めて診察を受けた際、鼓動が高ぶってそれ以来心臓病ということになって学校へも行かず家で勉強したアメリは一風変った女の子として育てられます。いたずらが好きでいろいろ微笑ましいエピソードが紹介されます。例えばプレゼントでもらった中古カメラを撮って遊んでいるとその前で隣りの住人が運転する自動車が衝突してしまいます。その事故の原因をカメラ遊びのせいにさせられ、その仕返しを画策するのです。それはサッカー好きの隣人がテレビを鑑賞中、その屋根に登ってラジオを聴きながら肝心のシュート・シーンになるとアンテナの線を抜いてしまうという復讐をするような場面がおかしかったです。
そんな少女時代を過ごしたアメリにとって悲劇が訪れることに。ある日、母と一緒にノートルダム寺院に行き、アメリに弟を授けてくれるように祈って寺院を出る際、天から降ってきたものは弟ではなくカナダからの観光客が身投げしてきたものでした。その巻添えとなって母は亡くなってしまうのです。その死を受けて父はますます自分の殻に閉じ篭り、庭のミニチュア作りに夢中になってしまいます。
そんなアメリも成人しモンマルトルのカフェで働くことになります。アメリの好きなことといったらクレーム・プリュレというお菓子の表面をスプーンで壊すこと、それにサンマルタン運河まで行って平らな石で水切りをすること、そのため常に平らな石を見つけてはポケットにしまい込むのでした。そのカフェに勤める人々や常連客も個性豊かな人達で、その紹介も好きなことを並べるという手法でその性格をうまく表現していました。
そしてダイナア妃が事故で亡くなったあの日、運命的な事件に遭遇することになります。そのニュースをテレビできいて驚いたアメリは香水の瓶のふたを落とし、それを探していてある物を発見する。それは多分このアパートを借りていた先住の人が少年時代に隠していた宝箱でそれを開けた瞬間、アメリはとても幸福な気分になり、この持ち主を探すことを始めるのです。そういった他人への関心がアメリの「遊び」となっているのです。その持ち主を探す過程も面白いのですが、その後本人を探し出しその宝物を返す件りもアメリならではのいたずら心があって微笑ましいのですが、そんないたずら好きなアメリが興味を持った青年が現われます。そのニノという青年は駅のスピード写真の失敗したものをかき集め、それを拾ってきては再生しアルバムに収めるという変った趣味の持ち主でした。そんな彼に興味を持ったアメリは彼が落としたそのアルバムを拾い、それを届けようと彼の勤めるポルノ・ショップへと向かうのです。そこで彼が遊園地のお化け屋敷でもバイトをしていることを教えられ、ますますこの青年に興味(恋心)を持つようになっていくのです。それが例のいたずら心と相まって独特のアプローチを試みるのですが、そのアプローチの仕方がシャイで内気なところがあってとても可愛かったです。
その他にもガラスのような骨のため外出ができず、家にこもって絵画を描き続ける老人や、果物屋の主人とその主人にいつもいじめられている従業員のやりとりや、この主人にいたずらを仕掛けるアメリの行動やカフェの客で異常に嫉妬深い男と過度に病的な女従業員とのやりとりとか、アメリのパパが家に閉じ篭っているため旅行を薦めるアメリが友人に頼んでパパが大事にしていた庭のミニチュア人形をいろいろな国の観光地へ持っていってもらい、写真に収めて送ってもらうといういたずらも可笑しい演出でした。そういった印象に残る数々のエピソードがこの映画にはちりばめられていて、どれもアメリのいたずら心に支えられていて好感が持てました。(他にも特殊効果を使った映像とか、アメリの周辺で生き生きとしている装飾品の数々や、思わずサントラ盤を買ってしまったヤン・ティルセンの音楽などどこを取っても品のよい映画作りをほうふつとさせる作品でした)
そして何よりアメリ役を演じたオドレイ・トトゥという女優さんがいい演技をしていたように思えました。さらに脇を固めるバイプレイヤーたちも個性豊かな俳優ばかり(ジュネ作品には欠かせないベルモンドに似ているジョセフ役の男優やニノを演じたマチュー・カソヴィッツという若手男優等々)でキャスティングも成功していたように思えました。監督は『デリカテッセン』(マルク・キャロと共同監督)で一躍有名になり、その後『ロスト・チルドレン』(マルク・キャロと共同監督)、『エイリアン4』という話題作で評判を呼んだジャン=ピエール・ジュネ。それまでのダイナミックな作品に比べ、今回の作品はいわば女性層に受け入れられるメルヘンチックなものだけにこういった作品でも類まれな才能を発揮するこの監督の今後に注目していこうと思っています。これは他人に胸を張って薦められる映画でした。
監督:ジャン=ピエール・ジュネ、脚本:ジャン=ピエール・ジュネ、ギョーム・ローラン、音楽:ヤン・ティルセン。2001年フランス作品。
(キャスト)アメリ・プーラン:オドレイ・トトゥ、ニノ・カンカンポア:マチュー・カソヴィッツ、ラファエル・プーラン(アメリの父):リュフュス、管理人マドレーヌ:ヨランド・モロー、小説家イポリト:アルチュス・ド・バンゲルン、食料品屋の店主コリニョン:ウルバン・カンセリエ、リュシアン(食料品屋の従業員):ジャメル・ドゥブーズ、ジョゼフ(異常に嫉妬深いカフェの常連客):ドミニク・ピノン、宝箱の男ブルトドー:モーリス・ベニシュー、ストリップ嬢エヴァ:クロード・ペロン、コリニョンの父:ミッチェル・ロバン他多数。
2001年11月17日より渋谷シネマライズ他にて公開中。
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