2001年8月27日
『ゴースト・ワールド』(GHOST WORLD)
(感想文)私がこの映画に興味を持ったのはこの中の登場人物にSPレコードの収集家でしかも中年のさえない男が出てくるということを聞いていたからでした。それって、自分の境遇と似ているな、と思ったからでした。そういえば友達からも「おまえにぴったりな映画がある」と言われていただけにどんな映画か、それだけの興味で見に行きました。
ストーリーは退屈な地方都市で暮らしている、高校を卒業したばかりの仲のよい二人の女の子が主人公で、イーニド(ソーラ・バーチ)というちょっと風変わりな女の子と、美人ではあるがちゃんと生活することも考えているレベッカ(スカーレット・ヨハンソン)という普通の女の子が出会い系の広告にひやかしで中年男をカフェに呼び出す。その呼び出された中年男がシーモア(スティーブ・ブシェミ)という風采の上がらないSPコレクターなのです。その冴えない風貌を遠くから観察し、会う約束をすっぽかしてしまうのです。但し何となく気になったイーニドがこの中年男を尾行し、住んでいるところを確かめるところは何もそんなにまでしなくてもいいのに、と思ってしまいました。しかもこの男、ブルース系のレコード・コレクションを自宅の庭でガレージ販売していたのです。
この中年男に不思議な魅力を感じたイーニドはわざわざレコードまで買ってシーモアに近づいていくのですが、この二人の出会いのシーンが印象的でした。「このレコード何?」と言って話しかけるイーニドにシーモアが言ったことば、「これは全部78回転だよ」。そんなやりとりをするところは脚本家のうまさだなと思い面白く見ていました。この現代的な少女が友達、学校、家庭に馴染めず結局この中年男が唯一の話し相手となるのだが、自分の薦めで結婚相手を探してもらったものの、その関係がうまくいき出すと、不思議に寂しさが増してきてしまう、そんな少女の心の動きがこの映画の最大の見所でもありました。
そう、この映画の魅力の大半はイーニドという絵を書くのが趣味で、ちょっと生意気で、その癖寂しがり屋の女の子にあるのです。ソーラ・バーチという大変個性的なキャスティングの勝利とでもいいましょうか、この新鋭を主役に持ってきた監督の眼力には驚かざるを得ません。私もこの映画を観てすっかり彼女のファンになってしまった一人だからです。決して美人ではないけれど、現代的なところと根は女の子らしいところが同居して不思議な存在感があります。
またシーモア役のスティーブ・ブシェミの存在も大きい映画だったと思います。この俳優、アルトマンの映画で初めて観て以来、忘れられない人になってしまったのです。特に『ファーゴ』での怪演の印象が一番強いのですが、今回このダメな中年役を演じるにはちょっとあくが強すぎてかえってミス・キャストだったのではないでしょうか。(ちょっとキレるところでその本来の片鱗をみせていましたが)それと印象深かったのは高校の美術の教師役で出てきた女優がどこかでみたことのある顔だな、と思ったのですが、『グレイス・オブ・マイ・ハート』に出演していた女優さんということが後で分かってなるほどと思いました。この女優さんも大きな口が印象的で一風変った雰囲気を醸し出していました。
また他にもいろいろ個性的な俳優が出て来て(コンビニにはだかで買物に来るマッチョ・マンや一人廃止になったバス停の前のベンチに座って来ないバスを待つ老人や50年代のカフェで50年代の髪形をしたウエイターなど随所に魅力的なバイ・プレーヤーを配していました。私が気になったのはやはりシーモアのレコード・コレクションで、これは何でも監督のテリー・ツワイゴフ自身の趣味だそうです。
またイーニドが家に帰ってポータブル電蓄をかけるのですが、その乱暴な針の置き方がやけに気になってしまいました。あー、レコードが可愛そう、って私も相当バカなコレクターなのでしょうか。ちょっと理解できなかったのは最後にかかったインド風の音楽と一部余計なカットをわざわざ挿入していることでしょうか。でもこの映画は総体的にお薦めの1編となりました。
監督、脚色:テリー・ツワイゴフ、原作、脚色:ダニエル・クロウズ、製作:ジョン・マルコヴィッチ、リアン・ハルフォン、ラッセル・スミス、音楽:デヴィッド・キティ、2001年アメリカ作品。
キャスト、イーニド:ソーラ・バーチ、レベッカ:スカーレット・ヨハンソン、シーモア:スティーブ・ブシェミ、ジョシュ:ブラッド・レンフロ、ロベルタ:イリーナ・ダグラス他
2001年7月28日より恵比寿ガーデンシネマにて公開中。
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