コンサートレポート

やはり私は60年代のクリフ世代の人間だと再確認させられたコンサートでした。

クリフ・リチャード・イン・東京2003


2003年3月10日(水) 東京国際フォーラム ホールAにて

今年本格的なライブとしては初めての体験となったクリフ・リチャード・コンサートは大変思い出深いコンサートとなりました。どこまで正確にお伝えできるか分かりませんが忘れないうちに一通りおさらいしてみましょう。

先ず比較的早く会場に着いてしまったので所在なげに知り合いを探していると、何やらロビーの方が騒然としている様子なのでそちらに行ってみました。会場を見まわすと観客のほとんどが中年世代の女性群で占められ、若い女の子や普段のロック・コンサートで見かけるロック青年はほとんど発見できないほど中年のおじさん、おばさんで占拠されていました。そしてプログラムやグッズを求める人々が長蛇の列をなして売店に殺到しており、これはいつものコンサートと明かに違うな、と直感的に感じてしまいました。私もやることがなかったので一応その列に並びプログラムを買ったのですが、結局コンサートが終ってからでは売り切れの状態でどうやら正解だったようでした。(プログラムも2500円もしたのですが、写真満載、向こう製の素晴らしいもので安い買物だったと思いました)

プログラムを買うのに思わぬ時間がかかってしまい、結局席に戻ったらすぐに開演というタイミングとなってしまいました。まず聴き覚えのあるイントロが流れクリフが登場、第一声からゾクゾクっとするような魅力的なヴォーカルでした。最初の曲はこのツアーでも毎回やっているという「恋はこれっきり(We Don't Talk Anymore)」。この曲そんなに思い入れのなかった曲でしたがオープニング曲としても結構効果的なナンバーだなと思いました。そしてお馴染みのイントロとともに「Move It」が演奏され一気にクリフの世界へ引きずりこまれる思いでした。更に20世紀最高の歌、これを歌えてラッキーだ、とかいうコメントとともに歌われたのが「Over The Rainbow」でした。この曲、クリフのもので聴くのは初めてでしたが後半「Wonderful World」のフレーズが出てきたり、ちょっと細工がなされていてなかなか聴き応えのあるバラード・ナンバーでした。そしてイントロを聴いただけでそれだと分かった「Constantly」へと。この曲、私が買ったクリフの2枚目のシングル盤で、当時を思い出してかみしめるように聴いていました。さらに1曲おいてなんと私の最も好きな思い入れ曲「Evergreen Tree」(この曲と「Next Time」がクリフのバラードの双璧と思っています)をやってくれたのでした。これには嬉しいというより目頭が熱くなってしまうような感動を覚えました。この頃気がついたのですがバックの演奏クルーも実にこなれた演奏で、特に10名ほどのスモール・ストリングスを配していたのが全体に気品を加えており効果的だと思えました。それにしても「Evergreen Tree」を生で聴けただけでもコンサートに参加できてよかったと思える瞬間でした。

さらにアルバム『WANTED』からティナ・ターナーの曲を歌った後、ギターを抱えてお馴染みのベース・ラインのイントロから「Living Doll」をやってくれました。この曲も随分歌い慣れているのか、ヴォーカル・アレンジを随所に入れて余裕で歌っていました。これもクリフのロックン・ロール・クラシックだな、と思いました。そしてバラード・タッチの「Like Stranger」もついうっとりしてしまうような甘いヴォーカルで十分楽しめました。そうか、第一部はこういったバラード中心の構成なんだな、とこの時点で気づきました。その後で印象に残った曲は「恋のワルツ (When The Girl In You Arms)」というこれもしっとりとしたバラード曲。(これは「ラッキー・リップス」のB面の曲)それにお決まりの振り付けも魅力的な「Devil Woman」、そして前半最後にクリフが取り上げた曲がなんと「しあわせの朝 (Early In The Morning)」でした。この曲、実は前の日の記者会見で日本のみのヒットなので是非ともやってみたいが、自分でもあまりやらないナンバーなので忘れているかもしれないのでリハーサルを十分やって臨みたいと語っていたのでした。このメロディを聴くと昔よく聴いていたラジオの深夜放送を思い出してしまうのは私だけでしょうか?

ここで一旦終了、クリフの楽曲をバラード中心に満喫したといった前半でしたが、20分くらいのブレイクの後、今度はロックン・ロール中心の第二部がスタートとなりました。

先ず黒のレザー・パンツに着替えて登場したクリフが「Born To Rock'n Roll」「Do You Wanna Dance」を歌った後、ギター奏者のアンソニー・クラークと一緒にデュエットでエヴァリー・ブラザーズの「Claudette」を披露。この曲、ロイ・オービソンの曲なのですがエヴァリーの曲としてこの曲を取り上げるセンスに脱帽といったところでした。そしてもう1曲やった後、聴き覚えのある「いつも青空 (I Could Easily Fall in Love With You)」へとブリッジされていった時は思わず狂喜して飛び上がりたい気分になりました。この曲も今回のライブでやってほしいと思っていただけに嬉しさを隠すことができませんでした。更に最も影響を与えてくれたシンガーという紹介でエルヴィスの「Too Much」と「Don't Be Cruel」をメドレーでやってくれこれもサイコーの出来でした。クリフにとってもエルヴィスがいかに大きな存在であったかがよく分かるカヴァー・ヴァージョンでした。

その後「Summer Holiday」と「The Young Ones」を惜しげもなくやってくれたのですが、この時、バックのストリングス部隊を再び呼び戻しお馴染みのナンバーを演奏してくれたのでした。この演出が実に効果的で、私が今回特に感じたことに、このGinza Stringsという現地調達のクルーをバック・サポートに加えたことがサウンドに巾と優雅さを醸し出していたように思え、大正解だったと思いました。途中クリフは誰でも知っている歌詞の部分を観客に歌わせたり、心憎い演出も交えて会場の雰囲気を盛り上げていました。そしてこの後、一旦舞台から退いて、3人いたバックの男性コーラス隊に歌を任せ、再び登場し「Be-Bop-A-Lula」を裏声で歌ったり、デル・ヴァイキングスの「Come Go With Me」とボビー・ダーリンの「Dream Lover」、スカイライナーズの「Since I Don't Have You」の3曲をドウワップ・メドレーとして続けて歌ってくれました。このバック・コーラスとのヴォーカルがまたシビレるもので(最後はハートビーツで有名な「A Thousand Miles Away」のフレーズで閉めてくれました)アレンジも選曲も見事な演出でよかったと思えました。そういえば聴いていて気がついたのですが「Dream Lover」と「The Young Ones」は同じコード進行の曲でなるほどクリフが取り上げる楽曲としては尤もなものだと思いました。更にロックン・ロール・クラシックともいえる「Shake, Rattle & Roll」をハンク・マーヴィンをほうふつとさせるギター・ソロ(このギターリストも凄いと感じさせるベテランでした)とともに盛り上げ、もうこの段階に来ると観客のおばさんパワー炸烈といった感じで前の方へ走るは、写真は撮るは、ペンライトは回すはといった無法地帯と化し、まさに興奮のるつぼといった感じでした。更に止めは日本でも人気の高かった「Congratulations」をもってくるあたりは実に考えられた構成だなと思いました。やはり本国で今だに人気の高いトップ男性シンガーだという事実を改めて認識させてくれたステージで、フィナーレはちょっと宗教的なエンディングと別離を匂わせる「Millennium Prayer」で閉めるあたりはもう参った!となかば放心状態で聴いていました。この日本では「蛍の光」で有名なイギリス産のポビュラー・ソングはいつだったかクリフの集いに参加した際、いろいろなライブ・ビデオを見せてもらったのですが、その中でクリスマス・ソングとしてやはりフィナーレに使われていました。

たっぷりとクリフの魅力に浸り、60年代のゴールデン・エラにタイムスリップした後、自分に訪れたものはヒーリングともいえる安らぎで、ここでも音楽によって精神が清められる体験をまざまざとしてしまった満足感でいっぱいでした。多分私と同じ思いを感じて会場を後にしたオールド・ファンが多かったのではないかと推測できるグレイト・パーフォーマンスでした。本当に生きていてよかった、というのが偽らざる実感です。



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