コンサートレポート

アット・ホームなヴァン・ダイク・パークスに酔いしれました。

HE GAVE ME A GOOD VIBRATION!




私が初めてヴァン・ダイク・パークスのコンサートに行ったのは1988年のことでした。今でも記憶に新しい新宿厚生年金会館ホールでのコンサートはバックに様々なミュージシャンを従えて凱旋セレモニーのような豪華なコンサートでした。あのハリー・ホソノ氏もベース・プレイヤーでしっかり参加していたのですから。それから10年あまりが経って、再び憧れのヴァン・ダイク・パークス御大を生で観れるとは思ってもいませんでした。その意味でも先ずはプロモーターの人に感謝感謝。

というわけで乗り込んだ会場から先ずは説明いたしましょう。前々からロニー・スペクターやゲリー&プレイボーイス、ハーマンズ・ハーミッツというかつてのリバプール世代にはたまらない人選で気になっていたライブ・スポットだけにいよいよという感じでした。実は以前に六本木に行った際、今回の予約も兼ねて視察で覗いてみたのですが、ライブを聴くには丁度よいスペースとアメリカナイズされた会場に安心して帰ってきたのでした。

で、今回は例によって最近コンサートのお供のご常連となっているロネガンさんを誘ってのコンサートでしたが、セカンド・ステージの受け付けが始まる前に着いてしまいロネガンさんと一緒に入口付近で話しながら待っていました。丁度ファースト・ステージがひけて三々五々、観客が退場してくるところで、それぞれの満ち足りた顔をみながら期待が膨らんでいく思いでした。一人の男性客などは、ドアにいた係員にわざわざ挨拶をして持っていたCDにサインまでしてもらった、とやや興奮気味でお礼を言っていました。これはきっと満足のいく内容だったのだなと思いメンバーを確認すると予想通りヴァン・ダイク・パークスとギター、それにベースだけという少編成でした。でもベースが何とあのJTのバックで有名なリランド・スクラーだったのには思わず叫んでしまいました。

定刻になってもあまり人の気配がしないのが不安なものの、ロネガンさんと一緒に昔観たコンサートの様子やらこのライブ・スポットのセレクションの妙などを話していると受付けが開始されました。我々は何と最初の受付けで予約までして意気込んで出かけたことがちょっと拍子抜けしてしまうような有様でした。会場に入ると、何と未だ前のステージの余韻が残っており、当のヴァン・ダイク・パークスさん(以下VDPとします)もフアンと気さくに写真に収まったり、リランド・スクラーさんも客席で話しをしたり握手をしたりしており、実にインティメットな雰囲気が残っていました。我々は自由に席を選べたのですが、全体が見える後ろの席に陣取って開演を待ちました。

ゆっくり会場を見回したのですが、200席位のゆったりしたスペースにこんな店をやってみたいですね、などと話していると、店の人が「二階席も含めて全部で300席あります。」と説明してくれました。しかし開演間近になっても席は前の方しか埋まらず、ちょっと観客の出足が悪いのに不安な思いすら感じてしまいました。…大丈夫なのだろうか?VDPさんは気を悪くしないのだろうか?彼の日本での人気ってこんなものなのだろうか?…などと思って辺りをながめていました。多分3、40人という数だったように思えます。

とはいえ演奏が始まるとそういった不安は一編に吹き飛んでしうまうような演奏でした。先ずおもむろに3人がステージに登場し、「KONNBANWA! Ready to Rock'n Roll! KANPAI!」と叫んだ後スタートの曲は聴き覚えのある「ジャンプ」というインスト・ナンバーでした。続いてアルバムでも2曲目に入っている「Opportunity」をあまりアレンジなしで演奏しくれました。(ヴォーカルはVDPのみで後の二人はコーラスもやりませんでした。)体全体でエレピを弾きながら実に楽しそうに演奏するVDPの世界に知らず知らずの内に引き込まれていきました。「パジャマ・パーティ!」とか「ダンスをしたい人はここがその場所ですよ。」とか言ってくれて実に気さくなおじさんといった風情なのです。つなぎのカーペンター・ルックで登場し、バーのマスターのようないでたちのVDPさんはどうやら観客の数など関係なく日本でのステージを楽しんでいる様子が窺い知れるパフォーマンスなのです。

その後、順番は忘れましたが「Orange Crate Art」や「Summer In Monterey」「Sail Away」などを演奏してくれて、思わず一緒に歌ってしまいました。この「Sail Away」を聴き終えた時、あまりの嬉しさで涙ぐんでいる自分に気付きました。こんなに素直にピュアな観客になれたのは久し振りでした。「今日、皇居へ行ったんだけども天皇は姿をみせなかった」とか冗談ともとれるつなぎ話しをしながら次の曲「Wings of A Dove」へと移っていくテンポも最高でした。バックの二人、ギターのグラント・ガイスマン、ベースのリランド・スクラーの演奏も決してしゃしゃり出てこないアンサンブルを重んじたサポートで、信頼関係ができているなという感じでした。そうこうしていたら今度は「英雄と悪漢」のメロディが奏でられ、ブライアンとの関係をほうふつとさせる演奏でこれまた大満足。拍手をすることすら忘れてしまいました。その他にも「Cowboy」や「FDR In TRINIDAD」やいろいろな曲を演奏してくれたのですが後半は大声を挙げて声援している自分の気持ちを整理するので精一杯で我を忘れて聞き入っていました。

実は演奏が始まるちょっと前にサラダやチーズを頼んだのですが、食べることすら忘れて、というよりサウンドの方で胸がいっぱいで、十分にVDPシェフの料理の数々が美味しく感じ、それどころではないという感じでした。最後は御大自らがステージから降りてきて観客の一人一人と握手までしてくれました。勿論この私も憧れの人の生手をがっちりと握り締め、「サンキュー」というのがやっとの思いで感動していました。

少ないながらも暖かい観客の拍手がなり止まないまま、アンコールでは即興?でジョン・レノンとボブ・ディランが歌詞に出てくる歌を初めて歌うものだといって披露したり、リトル・フィートを思い出させる「Sailin' Shoes」で締めくくるあたりはもう文句なしの演出でした。

演奏が全て終ってから、VDPの魅力って何なのだろう?何がこんなに感動させてくれるのだろう、としばし考えこんで座席に座っていました。この人の音楽を聴いているといつも思うのですが何とも幸せな気持ちにさせてくれるのですが、今日のコンサートを聴いてその理由が氷解したように思えました。そう、VDPのサウンドの魅力とはこの得も言えない親密感にあるだと確信しました。決してヒット曲では括れない親しみやすさ、或いは音楽を根っから楽しもうという無垢の精神、古い伝統に則ったアメリカン・スタイルの明るいサウンド、どれをとっても彼の紡ぎ出す世界を形容するには言葉が負けてしまっているのです。

しかしこのコンサートを聴きながら私が感じた至福感はきっとあの会場にいた限られたオーディエンスの誰もが共有した感覚だったのでしょう。或いはあの位の会場で、あの位の人数ならではの響き合いが生まれたのではないでしょうか。最初に感じたお寒い感覚は全くの杞憂と化し、二度と体験できないアット・ホームなコンサートに居合わせたことを心から喜びたいと思いました。(ちょっと興奮して筆がすべっている部分がありますがどうかお許しください。その位私にとっては近年稀にみるグレイト・パーフォーマンスでした。)



1999年6月23日(水)PM9:30より 11:00まで
六本木スウィート・ベイジル139にて



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