コンサートレポート

リヴの素晴らしいコンサートをはしごしてしまいました。

HE IS A REAL "IYASHI" SINGER!




去年行ったコンサートの中で最も印象的だったのは多分ヴァン・ダイク・パークスだと思っていますが、今年(といってもまだ終った訳ではないのに!)はもうこのリヴィングストーン・テイラーのコンサートで決まりかもしれません。最初からこんな口調ですからもうメロメロのレポートになること間違いないでしょう。人を褒めることが嫌いな人は読まないでくださいね。

さて、以前から是非ライヴを見てみたいアーティストの一人だったリヴが来日するということを知ったのは初めての方のメールからでした。その方には添付ファイルでコンサートのポスターまで送ってもらい、絶対に観に行こうと決意していました。特にチケットを取らずに当日、ふらっと出かけていこうと思っていたのですが、常連のロネガンさんも大変興味を示し、一緒に行こうということになり1週間前に会場へ行ってチケットを取っておきました。当日はペットサウンズの森さんもご一緒となり、3人で比較的前の席に着くことができました。(この席が後になってとてもラッキーな席になるのですが、その時はそんなことは全く予想もしていませんでした。)

開場が6時で開演が7時だったため3人でいろいろポップス談義をしていたのですが、突然森さんが後ろを振り向いて、誰かに視線を送ったのです。その先にはこれからコンサートの主役となるあのリブ本人がいたのです。びっくりして私も振り向くと、何とそのご本人が近づいてきて我々に挨拶をしに来たのです。思いもかけない対応に「Nice to meet you」というのがやっとで握手も夢のようでした。そんな思わぬ展開からこの日のコンサートはスタートしました。それと今回の会場となったカイという所はステージ側に控え室がなく、観客の間を通ってアーティストが舞台に向かうのです。そして丁度その通路に当る位置に私が座っていたのです。

先ずラフなワイシャツとサスペンダーという服装で登場したリヴは、一緒に演奏するビル・エリオットさんと一緒におもむろにステージに現われ、軽くギターを弾き出すと、それはもうあのジェームス・テイラーのサウンドと同じ音色でドキっとしてしまいました。どこかで聴き覚えのあるメロディだなと思うとベートーベンの第9のあの有名なフレーズがイントロとなっており、その流れで「Life Is Good」を演奏し出しました。淡々とした演奏ながら実に滑らかなギター捌きと独特の暖かい雰囲気を漂わせたスウィート・ボイスに私はすっかり魅了されてしまいました。間違いなくこれは極上のサウンドとパーフォーマンスだとこの瞬間予感しました。実際に聴く前もきっと今日はいい体験になるに違いないと予想はしていましたが、それはもう予想を上回る展開で一気に彼の世界に入っていく自分を感じました。

ここで順を追って1曲ずつ紹介してくべきなのでしょうが、私は彼の曲にそんなに詳しくないので間違うといけないので印象に残ったものだけ紹介してみましょう。先ず最初の曲「Life Is Good」で静かに絡むビルさんのローランドも大変快いメロディを刻んでくれます。何よりも張り上げないリヴの歌のうまさが身近で聴いて初めて実感できる魅力でした。そして引き続いて軽快なテンポの曲を歌い上げるとその曲の途中から何とオーリアンズのあの有名な「Dance With Me」へと曲が繋がっていき、自然と観客の中から♪ダンス・ウィズ・ミー♪とコーラスが入りとてもいい雰囲気になっていきます。リヴもその辺りの掛け合いを楽しんでいる様子で何とも自然な歌い方とギターの音色が憎いくらいでした。

その後、レイ・チャールズで覚えている「Hallelujah I Love Her So」をとても気持ちよく歌ったり、覚えたての日本語でブラザー・ジェイムスからの曲ですと言って「Carolina In My Mind」を兄以上に雰囲気を出して演奏したり、「Walking My Baby Back Home」をさりげなく披露したり、「City Light」という大変しっとりとした曲もやったり、とても自然な流れにすっかり聴き入ってしまいました。そして圧巻はバンジョーを取り出しこれはバンジョーのための曲ですといって軽く1曲弾いた後、これはバンジョーで弾いてはいけない曲です、といってアース・ウィンド&ファイアの「Celebration」やフィフス・ディメンションの「輝く星座」などをたて続けに演奏し、演奏のうまさも曲の取り上げ方にも舌を巻いてしまいました。

途中で10分間の休憩があるのですが、それもうまくギターを弾きながら演出してステージを降りました。その際、私の前を通らなくてはならないので、思わず手を延ばすと、気軽に答えてくれ、とてもフレンドリーな態度に感動してしまいました。

後半はリヴが一人で現われ、1,2曲ローランドの弾き語りからはじまり、お馴染みの「Get Out Of Bed」も演奏してくれました。ピアノのタッチもなかなかで、もう少し聴いてみたかったのですが、直ぐに「Bill, Help!」といって伴奏のビルさんを呼び出し、二人がとても信頼し合っている様がよく分かりました。今回初めて知ったビル・エリオットという人も大変実力のある人にもかかわらず実に控え目の演奏で彼のやさしい性格を感じました。二人とも穏やかな人柄がにじみ出ているようなコンビネーションで、あうんの呼吸のようなものを感じさせるライブでした。

またとても印象的だったのは突然ギターを弾くのを止めて、表情豊かに朗々と歌い出す曲があのガーシュインの名曲、「Someone to Watch Over Me」だったり、アンコールで歌った「Somewhere Over The Rainbow」も語るがごとく歌い出し、そのスタンダードを歌うセンスと歌のうまさに改めてこの人の魅力を感じてしまいました。個人的には「I Will Be In Love With You」や「Going Round One More Time」(歌詞の一部を日本語にして歌っていましたね。)などが好きな歌だったのでよく感情移入できて聴けたのですが他の曲もギターと歌が自然で、歌うことの本来の楽しさや決して声を張り上げないこの人の特徴がよく表現されていました。

そうそうそれと何と私の好きなクリス・モンテスの「The More I See you」をさりげなく歌ったり、他にもいろいろ知っている曲を取り入れ自分のものとして歌っていました。もちろん一番この人のものとなっていたのは「Somewhere Over The Rainbow」でこの曲は他にもいろいろな人が歌っていますが、もうリヴのものがスタンダードとなってしまい、どれを聴いても色あせてしまう程彼のものになっている曲だと確信しました。

通常のコンサートだったらここまでで終りなのですが、ここからが今回のコンサートのハイライトともいえるレポートなのです。アンコールも終ってすっかり和んだ雰囲気の中、例によって私の横を通って舞台を降りてきたリヴに思わずスタンディングで「Thank you for your great performance.」とか何とか語りかけている自分がいました。リヴも本当に自分の音楽伝わった喜びに満ちているような微笑みで語りかけてくれ、何だかとても身近な存在のアーティストに思えてきました。後ろへ下がったものの、まだ会場に残っていろんな人に囲まれているリヴに私は何を思ったか彼のCDジャケットを持ってサインを待っている列に並んだのでした。そして自分の番がきたので握手とともにコンサートの素晴しさを伝えながらジャケットにサインをねだりました。リヴは私の名前を1文字1文字聞き返してサインしてくれました。(冒頭の写真がそのサインです。)その後、森さんが持っていたカメラで私たちと一緒に写真に収まってもらい、キーボードのビル・エリオットさんにもサインをしてもらい、写真を撮りました。この人もとてもやさしい雰囲気を持った人で、リヴとの無言のコラボレーションが見事に成立していて好感を持ちました。

興奮覚めやらぬまま外へ出て地下鉄に乗ろうと思ったのですが、森さんが「歩きましょうか?」といってくれたので三人で渋谷まで歩いて帰りました。もうとても幸せな気分に満たされていて、この時、絶対明日も観に行こうと密かに決めていました。



そして日曜は用事があったのですが、適当に片付けて飛び出すように横浜に向かいました。場所もよく分からないまま、横浜に着いて、会場を探したのですが、意外と横浜駅周辺が分かりにくく、結局東口と西口を間違えていたことを随分経ってから気付き、やっとの思いでサムズ・アップのあるビルを見つけ、駆けつけました。いわゆる映画館がたくさん入っているビルの一角にあるカントリー系のパブのようなところで、遅く着いたにもかかわらず、あまり客は入っていませんでした。そこで前の方の席を選べたのですが、結局ショーが始まった頃でもせいぜい40人位のオーディエンスだったと思います。

既に常連となっているような方が何人か声をかける中、あの暖かい雰囲気を持ったリヴがおもむろに登場し、昨日と同じ入り方でギターをつまびき出しました。たまに目が合ってドキっとしたりして、一人で興奮していました。今日は2回目ということで落ち着いて曲の内容まで聞き取ることができ、たまに覚えたての日本語を交えて実にスムーズに歌っていました。途中で着ていたベストをゆっくりと脱いで、それを丁寧にたたんで後ろへ片付けるしぐさがとても微笑ましく感じました。また例のバンジョーをプレイした後、ギターに持ち替えようとして、低い天井にバンジョーをぶつけそうになり、思わず上を見ると、何と天井がガラス張りだったのに気づいて、「Hallo!」と自分に挨拶して笑いを誘っていました。他にもアンコールの際、「Somewhere Over The Rainbow」を切々と歌い上げていた時、店の電話が鳴ってしまい、店の店員があわてて出ていたのですが、それにすかさず、「I'm not here.」とか言って少しもいやがらない様子でかわす辺りはこの人の人格がにじみでているな、とつくづく思いました。

また一番前の席に親子連れが見に来ていたのですが、その5,6歳の子が退屈でいろいろいたずらをし出したのですが、リヴは少しも動ぜず、むしろそんな家族を歓迎しているような扱いによくできた人だな、と感心してしまいました。さて、ここで一つクイズです。一番前にいた女の子の席を覗き込んだリヴはそこに本日のコンサートの内容と店のメニューが印刷されているパンフを手にしてどういうことをしたのでしょう?1:そこに載っていた自分の写真の頭にサインペンで髪の毛を書きこんだ。2:冗談で自分も料理と飲み物を注文した。3:そのパンフをマイクの前に貼り付け、アルバムの宣伝をした。正解はあえて伏せておきますので彼の性格の一端を推理してみてください。

そして予定通りショーが進み、アンコールも2度答えた後、楽屋に消えたリヴでしたが、すぐに姿を現したので、いち早くつかまえ、昨日のお礼と今日、急遽用意したスモール・プレゼントとメッセージを手渡したのでした。(断っておきますが、こんなことをするのは生まれて初めてのことで、自分でも不思議な位なのです。)その際、感極まってあまり言葉の出てこない私に心から感謝の表現を表してくれたリヴの表情がとても印象的でした。「またもう一度来日してください。」と言うのがやっとで、他にも話したい人が並んでいたので早々にその場を後にしてきました。

それにしても向こうの好きなアーティストにこのように親しく接した経験がなかっただけに、純粋な気持ちになって感謝の意を言えたことの喜びがじわじわこみ上げてきて、一人でスキップをするように横浜の街を闊歩していました。これといって強い思い入れのあったシンガーではなかったのですが、思いもかけず身近に接することができ、これが本来のアーティストとフアンの関係なのかもしれないと思い直しました。それとともに音楽を聴くという日常何気なく行っている行為がこんなにも人の気持ちを和やかにし、前向きな気持ちにさせてくれるとは思いもしませんでした。多分ヴァン・ダイクの時も感じたのですが、決して多くないオーディエンスに対し、歌うことの楽しさを直に感じさせてくれたのが今回のリヴのコンサートの特徴だったのではないかと思いました。

森さんとロネガンさんとも語ったことなのですが、長い間趣味的な音楽を聴き続けてきて、50近い年齢になって初めて音楽を聴いたり、コンサートに通ったりすることの真の喜びを感じられることが驚きでもありました。多分この感覚が癒すという言葉で表現できることではないかと実感できました。例えば私の身体のどこかが具合が悪かったり、気分が優れないことがあるとしたら、絶対薬を飲むよりはいい音楽を聴くことの方が回復するに違いないと強く感じました。音楽の持つ治癒力というものをつくづく考えさせられるリヴのコンサート体験でした。


2000年3月11日(土)PM7:00より 9:00まで
表参道のカイにて


2000年3月12日(日)PM4:00より 6:00まで
横浜のサムズ・アップにて




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