広東省の南拳のうち主なものは五大名家・十三名拳と呼ばれおり、侠家拳は十三名拳の一つである。言い伝え によれば侠家拳の源流はチベットのラマ僧が編んだ拳法に発するとされる。史実として確認できるのは、臨済派 和尚星龍長龍(又の名を金釣禅師、大侠李湖子ともいう)が四川より広東の慶雲寺に至り、僧人であった王隠林 に伝えたのが最初である。王隠林はまたの名を王飛龍とも言い、広東武林十虎のうちで最強(第一虎)とも言われた。 王隠林には何人かの弟子がおり、王隠林の次の世代で3つの流派に分かれたが、弟子の一人である王 倫の流派は「侠拳」と名乗った。侠家拳ともいう。他の2つの流派はそれぞれ「白鶴拳」、「ラマ拳」を名乗っ ている。白鶴拳という名称は創始者が鶴と猿が戦う様子からこの拳法を編み出したという伝説に由来している。 福建に伝わる白鶴拳とは別の流派である。ラマ拳という名称はラマ僧より伝えられたという伝説に由来している。

王倫先師は洪家拳名師で棍法で有名であったケ龍と深交があり、それぞれの武術をお互いの高弟に学ばせた。 ケ龍の子であるケ錦涛は洪拳侠拳の一代宗師となった。ケ錦涛先師は楊式太極拳伝人である楊守中とともに多年 にわたり切磋琢磨をし続けて、太極拳の真諦をも得た。ケ錦涛は生涯を武術の普及に捧げ、広州や香港に数多く の弟子を持つ。東京在住の劉湘穂師父もケ錦涛先師に師事している。

ケ錦涛先師の子であるケ鎮江師父は4歳より父に武術及び書法を教わる。侠家拳、洪家拳、太極拳を始め様々 な武術を学び、広州市武術協会常務副主席、広州武術館館長、広州武術代表隊領隊兼総教練などを歴任し、1979 年より広州南奧武術学校校長となり、後進の指導に努めておられる。

侠家拳は一般には長橋大馬を主な特徴としているとされるが、実のところ長橋大馬・窄馬短打が調和され一体 となっている。螺旋勁・離心勁・寸勁を多様し、柔法が半分で剛法が半分であり、その風格は「棉裏蔵針」と称 される。套路は小羅漢拳、大羅漢拳(達磨拳)などがあり、武器は侠家単剣刀、黄龍棍などがある。また様々な 外功法・内功法が伝わっている。また洪家拳と兼修する人も多い。




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